……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-6
「ウソウソ。冗談。君の重荷になりたくはないよ。君が里美ちゃんを好きなのはばればれだもん。そして私のことは愛情じゃなくて同情っていうのもさ。んーん? それとも欲情かしら?」
「先輩」
「どっちでもいい。なんでもいい。とにかく寂しさ埋めてくれた君が好き。だから、すこしだけ、わがまま聞いてよ」
「俺は」
「同情してよ。私に」
「……」
「今度の土曜日。お祭りに一緒にいこ。それでもう最後にするから」
最後にする? 今できないものをどうやって?
そんな疑問は彼女の目の辺りの化粧を汚す雫が流してしまった。
*―*
金曜日。
普段は静かな夏休みの学校なのに人だかりができる。理由は出店の準備を行うため。
本来なら会場に直接運ぶほうがよいのだが、年々規模を増す相模原夏祭りは場所が神社だけあって通路が狭い。一昨年の祭りでは最初に鳥居近くの店が構えてしまったため運び入れることが困難となり、客足にも影響を及ぼした。
そのため去年から近くの高校、すなわち相模原高校に物資を一時預け、境内近くの出店の物資から運ぶようになったのだ。
「明日はお祭りだね」
「はい」
ヨーヨー釣りのバイトをする予定の橘紅葉はどうやって調べたのか紀夫を呼び出し、ゴムプールと空気入れを運ばせていた。
「やっぱり里美ちゃんと行くの?」
「いえ……」
境内の中腹あたりに店を割り振られたおかげでそこまで健脚でもない紀夫でも何とか運び終える。
「あら、じゃあ理恵ちゃん?」
「はあ」
「なにそのはあって。もっと気合入れなよ。風船には水入れてさ」
水鉄砲のような竹の筒で器用にゴム風船を膨らませる紅葉は色とりどりの風船を膨らます。
今日はまだ本番ではないものの、待ちきれない近所の小学生が数名見ており、紅葉はパフォーマンスがてらにいくつか渡していた。
「でも綾さんはどうなの? なんかさっき君にウインクしてたような気がしたけど」
「綾さんもエスコートします」
「え?」
紀夫の意外な言葉に紅葉は作りかけの風船を放してしまう。
「うわ、つめて!」
「きゃ、きゃっ」
目の前ではそのしぶきをまともに浴びてしまった子供たちが楽しそうにはしゃぐ。
「えと、なに? ダブルデート? っていうか三人で行くのね。なんだ。おねーさんびっくりしちゃった」
「いえ、先輩も」
「先輩? 私にも来て欲しいとか? やーよ、子供のお守りなんて」
「いえ、美奈子先輩にキャプテンも一緒です」
釣竿に使う金具がぐさりと黒いヨーヨーを引っかき、パチンと破裂する。