……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-38
「あのさ、大学の説明会いきたいんだけど、自転車かしてくれないかな?」
「あ……、大丈夫だよ。でも遠くない? いいよ、送ってく。今そんなに仕事ないし、んーん、今から行こう。間に合わないと困るし」
そういうと仕事半端なままに、マネージャーは支度を始める。
夏休みを終えたばかりの彼女はすでに進路を考えているのか? もしかしたらすぐ明日の進路を考えているだけなのかもしれないが……?
「すいません。ちょっと行ってきますんで、あとよろしくお願いします」
「あ、うん。わかった」
キャプテンの久恵は彼の勢いに言葉を返せず、駐輪所に行く二人を見つめるだけ。
「おいおい、なんであたしを拒否しておいて里美は……」
それを遠目に見つめるのは同じく陸上部のエース。
「仕方ないよ。紀夫君、彼女のことまだ好きみたいだし……(私はあきらめないけど)」
記録台紙片手にぼそりとつぶやくキャプテン。
「あー、先輩ずるいんだ。理恵だってあきらめないからね」
最近仲良くなれたが、恋は別腹な後輩が一人。
「んー、どうなんだろ。私はまあ、こうなるかなって予想してたし」
ちょっぴり残念そうにつぶやくのは引退を間際にした二年のエース。
「先輩だって食われた一人のくせに。もうこうなったら女子陸上部被害者の会を立ち上げないと!」
握りこぶしを固めて高らかに宣言する後輩に、これまでの成り行きを楽しそうに見つめていた部員がこっそりと近寄る。
「ふふふ、それで彼をどうするつもり? もしかして五Pでもするとか?」
闘志を燃やす綾に水を差すのは、厄介な二年生。
「な、五Pだなんて、紅葉、それはちょっと……」
「私は彼と居られるなら……。我慢してもいいかも」
「久恵先輩も一緒? 仲良くしても楽しいかもぉ〜」
「あら、それじゃ、理恵さんのお尻、また触っちゃおうかな」
「いいよ。ノリチンを交代交代でいじめてあげようよ」
「おいおい、あたしはまだノーマルだぞ? うん」
「何がノーマルよ。合宿中だって彼と隠れてキスしてたでしょ?」
「先輩だってエッチ、してたじゃないですか」
「あれは向こうからしてきたし、大事になったら私たちも危ないでしょ? だから、しょうがなく」
「その割には先輩、相性が良かったとか言ってたじゃない?」
「それは、だから、たまたまよ」
卑猥な話に華を咲かせる問題児四名。その様子をにやにやしながら見つめるのはやはり問題児。
さて、その思惑はいかほどに?
ただ、自転車を二人乗りで校門を出た二人には追いつくことも無い。
緩い速度でふらつきながら、たまに躓き、それでもしがみつくフリをして寄り添う。
いつか、きっと、おそらくは……!?
……タイッ!? 完?