……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-37
「ねえ、島本君は?」
「僕? んー、僕もいるよ」
「そっか、恋してるんだ」
「うん。けど、僕はその子のことを悲しませてしまったから、だから、嫌われてもしょうがないんだ」
目頭は性懲りも無く痛みを覚える。
「そうなんだ。でも、大丈夫だよ。きっとその子だってわかってくれるよ」
「そうかな」
「そうだよ。だってその子、多分、そうね、えっと、ね、遠回りしてよ。なんか考えるからさ」
「わかったよ」
時計はようやく九時を回るところ。夏休みの頃を考えれば高校生が二人、自転車で二人乗りしていたとしてもよくある光景。ついでに無灯火であっても。
「んーと、多分、大丈夫。私が保証する!」
不快指数の高い最近においてそれでも密着するのをやめない女子。男子は坂道を下るのを理由にスピードを落とし、対向車が来る度に路肩に止まる。
「ありがとう香山さん。僕、絶対にその子だけを見るよ。だから、きっと、振り向いて、もらいたい……」
希望と宣言の入り乱れる言葉。声は通りを行く車の音にかき消され、それなのに背中に伝わる安らぎの圧迫感。
「変わる……、絶対に……だから、待っててよ、里美さん……」
頬に伝う線が白く乾いたあと、このことで二度と泣くまいと誓う「」がいた……。
*―*
*―*
「ノリチーン! 課題手伝ってよぉー!」
「はいはい、たまには一人でこなしてね」
「マネージャー君、タイムを計ってほしいんだけど、手伝ってくれる?」
「はい、先輩。フォームのチェックも……」
「マネージャー。部活日誌のことだけど、細かいことって君に任せていいよね」
「ええ、部員が練習に専念できるようにすることはマネージャーの役目ですから」
「なあ紀夫、ちょっとだけいい?」
「だめです。綾さん」
「ちぇケチ……」
夏休みがあけてもいつもと変わらず、むしろ前より少しだけにぎやかな面もあり、
どことなくしょんぼりしている相模原女子陸上部。
マネージャーの島本紀夫はかいがいしく働きつつも、どこかそわそわしていたり。
「ねえ、の……、島本君、ちょっといいかな」
そしてもう一人。
「えと、いい? 忙しいなら後でもいいよ。部活と関係ないし」
今は部活中だというのにも関わらず、制服姿の部員が一人。