……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-31
「ねえ、私のこと好き?」
「うん」
「なら、抱いてよ」
「だって」
「いいよ。だって君が助けてくれなかったらあいつらに奪われたものだもん」
「そんなヤケにならないでよ」
「ヤケになんてなってないよ。私だって君が好き。だから、一番最初は大好きな君としたい。エッチ、上手なんでしょ? だから、上手に私を愛して」
しばしの沈黙と、その後に訪れる雷鳴のごとき花火。東の空を色とりどりに染めていく。
七色に映し出される彼女の顔。そして、自分。
もう里美も泣いていない。まだ少し瞳は潤んでいるが、普段のきつめな目もおとなしくなり、何かをねだるように唇をゆっくり動かしている。
「え?」
何か聞こえたきがした。
轟音にまぎれても聞こえる、大切な人の声。
……すき……
「俺だって!」
今度こそ、ようやく彼女を抱きしめる紀夫であった……。
*―*
「こっち、こっちなら多分……」
浴衣姿の女子とジーパンTシャツの男子が夜の神社の裏手を練り歩く。
後ろでは花火がきらびやかに祭りの夜を演出しているというのに、二人は行く道にだけ気をとられ、振り返る余裕もない。
「紀夫、手」
「痛い?」
「んーん、もっときつく握ってよ」
十分に、目いっぱい握っている。だがそれでも足りない。それは自覚している。言われなくとも。これが最後になるのかもしれないのなら。きっと。
「ねえ、どこまで行くの?」
「邪魔されない場所。誰にも、絶対に……」
不安気につぶやく里美に紀夫は低い声で返すだけ。
奥まればどこに出るというのだろうか? 二人が愛し合える場所などあるのだろうか? いっそのことホテルでも?
そんな迷いもある。財布には昨日今日のバイト代があり、それなりに彼女をエスコートできる。
なのに、なぜ?
神社から出られない、出てはいけない気がした。
理由はジンクス。
昨日まで知らなかったような恋人たちのはた迷惑な儀式。神社の鳥居を劣化させていくだけのそれが、彼を縛る。
もしここを出たらもう恋人には戻れない。
あの約束はここでのみ交わせたのだから。
「ねえ、疲れたよ……」
立ち止まった里美が指差すほうには太い杉とそれに慕うように並ぶ樹木が見えた。
踏み鳴らされているというほどでもなく、それでも日陰をつくられているせいで雑草も少ない。これなら多少のおいたもできるはず。
「里美。行こうか」
「ん」
振り返らず、行く先を変更。里美はただそれに黙って着いていった。