……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-3
*―*
火曜日。
「ねえ、紀夫君」
「あ、先輩……」
一人部室で提出物を書いていると、小柄な先輩美奈子がやってくる。
彼女から話しかけてくるのは意外……なのだろうか?
ただ返す言葉が見つからないのは確か。
この前は勢いのまま彼女を求めてしまった自分がいて、それを少なからず後悔しているのだから。
「どうしたの? そんな驚いた顔してさ」
「いえ別に……」
「なに? まだこの前のこと気にしてるの?」
「そりゃまあ……」
頭を悩ませる問題のひとつ。かといって謝るという懸案でもなく、落とし処が見つからない。
「ふふ、私は感謝してるよ? すごく気持ちよかったし、どきどきしたもん」
「はは……はぁ」
「まさにミイラ取りがミイラになったんだけどね」
「なんのことです?」
「んーん、こっちのこと。それよりさ、なんか部活の雰囲気変わったよね」
「そうですか?」
「うん。だってキャプテン見た? なんか女の子してるしさ」
そういう彼女も唇が若干不自然な赤をしており、指先も運動部に似つかわしくないピンクの様相。
「そういうの悔しいな」
「ライバル意識ですか?」
「んーん、やっぱりオンナなんだなって思って」
そういって視線を自分の手に落とす美奈子。
爪のお手入れはまだ未熟なのかいくつかムラがある。
「そんなの、当然じゃないですか?」
「君は肝心なところがわかってない」
昨日も似たようなことを言われた気がする紀夫。かといって思い当たるところも無く、ただ思い悩むだけ。
「ねえ、キャプテンと何かあった?」
「何も……ないです」
「そう? なんか君にべったりな気がするけど?」
彼女の観察眼は正しい。事実久恵は事務仕事にかこつけて彼の周りをうろついていたのだから。
「俺はマネージャーですし、当然じゃないですか?」
「それだけとは思えないな。だって彼女、女の子してるもん」
「その女の子してるってなんですか? もう、先輩までからかわないでくださいよ」
このまま話していたら彼女のペース。巻き込まれたらきっと余計なことをしゃべるに決まっている。そう確信した彼は強気に声を荒げて会話を終わらせることを選ぶ。
「こういうの……、女の子してるっていうのよ」
一歩、二歩。ゆっくり近づいてほほをなでる美奈子。つま先立ちして膝をおって、そっとほほを合わせる二人。どちらとも無く、ただ雰囲気で。
「今週の土曜、空けててくれたら、もう一度ぐらいいいよ?」
甘美な誘惑は互いの弱みを知っているからこそ……。