……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-2
*―*
洗濯物との格闘も今週でひと段落つく予定。
来週からは練習時間も短縮されるし、保健室のクリーニング代行も終わるはず。
「よし、おしまい! 次はと」
タオルを計三十枚干し終えた紀夫は久恵に頼まれていた活動報告書を書こうとボールペンを持つ。
――久恵先輩、変わってくれたのかな。なんかすごく可愛くなったし。
それが自分のおかげなのかといえばそれは自惚れが過ぎる。けれどきっかけを与えたのも事実。
――いやいや、今は仕事仕事!
日誌を開き最近の出来事を紐解く……と、一枚のメモがあった。
一瞬にして動悸が高まる。
白い封筒は簡素にして質素。色っぽさのかけらも無い、少し前の彼女そのもの。
きっとこれは、多分……。
――おちつけ、きっと報告書の書き方かなにかでしょ。
たかが封筒一枚開くのに深呼吸を二回。いざ開こうとしてやめて、またあけようとして、それを三度繰り返してようやく開く紀夫。
相模原夏祭りの夜、神社の裏で待ってる。
メモにはワープロ印字でそれだけしか書かれていなかった。
差出人は不明。そもそも受取人も不明。
しかし、動悸は治まらない。
むしろそれが誰によるものなのか?
それが気になったから。
*―*
「お好み焼き食べにいこっか?」
「私パス。太ると困るし」
「えー、サトミンはもう少しお肉つけたほうがいいよ。じゃないと困るよ」
「なんで理恵が困るのよ」
「えー? 理恵が困るかな? ねえノリチン。困らない?」
「え? なんで俺」
無茶な振りをされて戸惑う紀夫だが、今気になっているのは手紙の差出人。ついでに受取人。
「とにかくパス」
「そう? でも今日は特別においしいよ? だってチーズとお餅が半額の日だもん。
理恵、絶対にうまく焼いてあげるんだけどなあ」
「絶対にパス。お断りします。ぜーったいお断り!」
両手で耳を塞ぎ、言いたいことを言うとそのまま走り去る里美。
いったい何がそこまで彼女を拒否させるのかは不明だが、したり顔の理恵を見る限りでは何か理由があるようだ。
「ふふ、サトミン。考えはお見通しだわさ」
いやらしい笑いを浮かべる彼女は魔女のように言い放つ。
「理恵さん。いったいどうしたの?」
「ふーん。ノリチンはわからないんだ。今の乙女の攻防がさ」
「乙女の攻防? 今のが?」
「ニブチン」
それだけいうと理恵も行ってしまう。
「あ、ちょっと。お好み焼きは?」
「ふふーんだ」
「ちょっと理恵さん!」
「そんなに食べたい?」
「もうおなかぺこぺこなんだけど」
「今週の土曜日、お祭りに一緒に行ったら考えてあげる」
笑顔の理恵を送ることもできず、ただ一人十字路に立ちすくむ紀夫だった。