……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-14
――里美さん!
顔は見えない。すぐに行き交う人ごみにまぎれるから。
――ちくしょう、どこだ? どこに行くんだよ!
確信なんてない。今はとにかく彼女の行き先の近くを目指すだけ。
肩がぶつかり嫌な顔をされても、石段に躓いても気にせず、ただ残り香に誘われるように走る紀夫。
けれどもうどこにもいない。
そもそも彼女だったのかも怪しい。
――気のせい? だったのか……。
確信が持てないから諦めに落ち着くこともできる。
――電話番号、聞いておけばよかった。
部員名簿を見ればそれぐらいできる。久恵の番号と理恵のはすでに登録済みだ。だが、彼女の番号だけは目で追って、意識的に登録しなかった。
彼女から自然に聞きたい。そんな理由。
石段に座り込むも小銭が重い。一息ついて、紀夫は再び境内を目指した。
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境内は店も無く、広場になっているところで小学生が鬼ごっこをしている程度。たまに地面にヨーヨーの残骸や串などが散らばっていた。
「はい、ご苦労さん」
受付のおばさんは二度ほど数えたあと、金庫からお札を持ってきてくれた。
テントの奥では人のよさそうなおじさんがビールを飲んで笑っている。
野口英世を三人と福沢氏を二人。とたんに軽くなった袋を見て今日の忙しさはこの程度なのかと落胆してしまう。もともと営利目的ではないで店なのだしと納得すべきかもしれないが。
――そうだ、あの手紙。
境内まで来てようやく思い出す。
月曜の手紙の差出人は誰? 誰が待つのか? 誰を待つのか?
好奇心。
そう言い訳をして、紀夫は社の裏手へと回った。
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神事といっても元旦と四季の祭り、大晦日ぐらいにしか賑わいのない相模原神社の社は町内会の集会所代わり。台所とトイレがかねそろえられているらしく、土日はお年寄りの憩いの場所。
その裏手はあまり人の手が入っておらず、膝まで草が茂っていた。
――こんなところに誰が来るんだろ?
およそ待ち合わせをする場所ではないと知りつつ、ずかずかと進む紀夫。
すると、少し離れた所で開けた場所があり、小学生のたまり場なのかアニメチックな絵柄のカードが何枚か捨てられていた。
――カードゲーム? まさかね。
足でそれをそっぽに寄せ、周囲を見渡す。
境内の方からは子供の声。林の方からは鳴き足りないせみの声。そして背後からは、ゆっくりとこちらに向かってくる草を踏み分ける音。
「里美さん?」
振り返る紀夫は希望の言葉を口にする。
「紀夫……、優を見なかったか?」
振り向いた先には相模原陸上部のウォーリーが立っていた。