揺れる想い-8
『ごめんな…俺、由里子を困らせるつもりはなかったんだけど…』
愛しい佐々先生は、今どんな顔をしているの?
切なそうにそう言った先生の胸に、本当は今すぐにでも飛び込んでしまいたかった。
「先生?」
『…だから…やっぱりいいわ…』
「え?何が?」
『今の俺の質問には…答えなくていいってこと!』
「………」
『なっ由里子…だからもう行って!』
「…先生私ね…」
『由里子…もう何も言わないで、このまま行けって!!』
先生は残りの資料を手早く拾い集め、私の腕に無理矢理抱えさせると、扉を開けてしまった。
『俺達…これで…いいんだよ…』
先生はまるで、自分に言い聞かせるようにそう言うと、私の背中をそっと廊下に押し出し、バタンッと扉を閉めた。
私はグラグラと心を揺さ振られたまま、廊下にただ茫然と立ち尽くしてしまった。
いつのまにか両目から流れだした涙は、滝のように私の頬を伝っていく―――
私は資料を抱えたままの肩先で、何度も何度も涙をぬぐいながら、佑介の元へと走った。
なぜ、そんなことをしたのだろうか―――?
言葉では上手く説明出来なかったけれど、今はただ佑介に会って、その大きな胸に抱かれたかった!