白銀のたまご〜パチプロチーコの生活2-4
[ 飯…まだだろ? ]
[ うん…奢ってくれるんでしょ?イクイク ]
換金した紙幣を財布に戻すと、私はシンちゃんの腕を取って歩きだした。
ホールにほど近いファミレスに入って昼夕兼用の食事をゆっくりと採る。
[ めずらしいわね
シンちゃんも今日は引き揚げ? ]
シンちゃんは普段、駅前のテネシーっていうホールに巣くっている。
定休日でもあるまいし、私に声かけたのは偶然としてもこっちの方を歩いてる事ってあまりない事だったの。
[ あまりよくねぇなぁ
ここンとこシブくてよ… ]
釘がシブいんだろう。
それでもこの人が今頃負けて帰る事はまず考えられない。
退散するなら遅くとも朝のうちにはいなくなってるわ。
[ 近々開店かな? ]
[ たぶんな…今度はデカいだろな ]
駅前が新装開店を前に大掛かりな回収に入ったなら、流れてくる客を狙ってこっちもシブくなるに違いない。
地元の客は所詮、地域のホールを回遊するだけなのだから。
[ 新戦国絵巻2出たんだって? ]
[ あぁ、たぶんアレだろな…
7区には入ってるから大量導入するつもりだな ]
[ えっ?7区にはもう入ってるの?
私、見てこようかな ]
[ よせよせ…あんなモンに手を出すなよ
荒い台はもういいよな ]
パチンコ業界には一種のサイクルがあるのね。
大当たり確率が極端に低くて、多額の投資を要して一度当たれば一攫千金…
と、まではいかないでも小一時間で十数万円ぐらい軽く出ちゃうような台がある。
これは結果として例外なく、膨大な借金と破産者を産む事になるの。
如何なる時も勝利に酔ったら負けよ。
やがて、これに行政から規制がかかると次には当たり易く絶対に勝てない台が出現するのよ。
なぜなら、出玉が極端に少ないからね。
たくさん出たようで実は勝ってない…
そして、パチンコ人口も極端に減少する。
そうなるとホールも稼動が悪いので、また徐々にと荒い台へモデルチェンジするサイクルを繰り返す。