「7年のジカン差」-1
散らかった部屋を片づけながら、私は今日何度目かの溜息をついた。
ジュースを持ってきながらヘラヘラと笑う彼を見ると、無意識に口から大きな息が漏れるのだ。
そんな私の心の中を知っているのか、知らないのか、真咲は無邪気にガラスのコップを差し出す。
「そんなに真剣に片づけなくてもいいのに。デートなんだよ?」
「ダメよ。だって真咲、自分でちっとも掃除しないじゃない」
「たまにはしてるよ」
減らず口を叩くこの男の子を見ていると、やっぱり年下なんだなあと思ってしまう。
私と真咲には6年の壁がある。付き合った時にはたいしたことはないと思っていたけれど、6年って結構大きな数字だ。
27歳の平凡なOLの私、岸香苗と、21歳のまだまだ若い大学生、山内真咲。
童顔に見られる私と、背丈ばかり大きい真咲とが道を歩いていても、そんなに年の差を感じさせることはないのかも知れない。
でもふとした時に、私は年の差を感じてしまうのだ。
それを指摘すると、口を尖らせていつも彼は拗ねてしまう。
6年という決して小さくはない年の差を感じることが、嫌なのかもしれない。
でもそれを分かっているのに、彼より大人な私はつい余計なひと言を言わずにいられなくなってしまう。
「全く、子供なんだから」
紙屑をゴミ箱に放り込みながら、ついつい文句が飛び出してしまった。
むっとした顔の彼に、すかさず腕を掴まれる。
「子供に見える?」
「見える。すぐにむきになっちゃうところとかね」
負けずに言い返した私の体は、そのまま強引に倒されて、柔らかいベッドに沈められた。
そのまま、強引に覆いかぶさってくる真咲の胸を押し返す。
「まだ片付け終わってないでしょ」
「嫌だ。我慢できない。俺、子供だから」
冷えきった私の首筋に、彼の温かい唇が降りてくる。
「…あっ……」
お説教を言うつもりだった私の口から洩れたのは、全然違う甘い音。
「香苗さんも、その気なんだ」
真咲が嬉しそうに笑う。その顔が妙に憎らしい。
「くすぐったかっただけよ。お子様と一緒にしないで」
「ふうん。香苗さんは大人だよね、俺よりも」
「…っ…少なくても6歳は大人よ」
耳たぶや首筋や鎖骨のラインを優しく指と舌で撫で上げていた、真咲がそっと囁く。
「じゃ、大人な香苗さんは、声なんて出さないでちゃんと我慢できるよね?」
意地になった私は、小さく頷いた。
それが合図のように、真咲の指先がシャツのボタンを外していく。
露になった肌がしんと冷たい空気に晒される。ひんやりとしたのはつかの間で、すぐに熱い唇が体中にキスの雨を降らせていく。
「香苗さんの肌、綺麗だね」
とろけそうな真咲の声。同時に胸の頂がツンと弾かれる。
「…ゃっ……」
「ちょっと触っただけなのに」
意地悪そうに笑うと、そのまま硬くなった乳首を口に含まれ、乱暴に舌で弄ばれる。
ひどく粗雑なやり方なのに、体は熱く追い上げられるようだ。