双子の姉妹。 2-1
アパートの施錠をしっかり確認して、階段を下りる。
今となってはどこにでもある、何でも初期装備のワンルーム。
もうしばらく他人を入れてないから、室内はぐっちゃぐちゃだが、気にしない。
俺は意外と面倒くさがりだったりする。
行き先は大学。
歩いて行ける距離なので、時間もあるしのろのろと向かった。
「……」
昨日、俺はなぜあんなことを言ってしまったのだろう。
だめじゃ…ないですね
多分、おばさんに対して体裁よく答えただけなんだと思う。
いや、そう思いたい。
深く考えずに答えた結果なのかもしれない。
悩む時間もなかったし。
まあ、そんなの言い訳にしかならないけど。
二人の前では言いたくなかったな。
琴音は別段気にしてなかったみたいだけど、麻琴はもうひどかった。
あの後も最後まで顔は真っ赤で、全く勉強にならなかった。
いつもは偉そうにしてるくせに、なんであんなので照れるんだ、麻琴のやつ。
「おっはよおー!」
「うわっ」
突然、後ろから香織が飛びついてきた。
いかん、大学内で無駄に敵をつくることは避けたい。
慌てて香織を離す。
「今、あたしのこと考えてたでしょ」
「はぁ?」
「すごい真面目な顔して歩いてたのが見えたから、後ろに回って驚かそうと思って」
香織はそう言って笑う。
「…」
「どうしたの?」
「いーや」
香織…か。
あんな話になったのも、香織がファミレスに誘ったから…いや、そんなこと考えるのは最低だ。
「ところで俊哉、今日は空いてる?実はさ、美味しいイタリアンのお店がオープンして…」
「わりぃ、今日はバイト」
香織の言葉を遮る。
最低でも週五はあの家に行ってるからな、俺。
「ええ!付き合い悪いの直せって言ったじゃん」
「しょうがないだろ、バイトなんだから」
「ううう…じゃあ明日」
「明日もバイト」
「…明後日」
「…バイト」
「…その次」
「…あー、わかったよ、その日なら」
「やったあ!」
落ち込んだり喜んだり大変なやつだ。
「つーか、なんで最近やたら俺を誘うんだよ」
「えっ!?えっと…せっかく高校から一緒なんだし、俊哉とはずっと仲良くしてたいなって最近思ったの」
「そ、気ぃ遣ってくれてさんきゅーな」
「…それだけ?」
「ん、なんか言ったか?」
「…なんでもない…じゃあ約束忘れないでね!」
それだけ言って香織は先に走って行ってしまった。
なんなんだ、あいつ。