双子の姉妹。 2-7
「あれ……誰?」
「ああ、双子の姉のほう」
「例の双子ちゃん?」
すると香織は色めき立った。
「……あなた、誰ですか」
麻琴はじっと香織を見つめて言う。
「そんな怖い顔しないでよー。あたしは俊哉の…彼女候補かな!」
「はぁ!?」
「ちょっ…」
あの…そりゃちょっと前はあなたが今言ったとおりのことを考えていたんですけどね…今日のことですっかり…
「きみたち双子ちゃんには負けないんだからねー!」
なに言っちゃってるんですか…あなたは…
「……」
「……」
長い沈黙が続き、その場の空気がどんどん重くなっていく。
「じゃあ俊哉、お子様を一人で帰らせるのは危ないから送ってあげて!あたしは大丈夫だから!」
「お子様…」
麻琴が呟いた。
「じゃあ俊哉、今日はありがとう!」
香織はそう言ったあと、いきなり俺に飛びついてきた。
脳が…揺れ…
「んぅっ!?」
「はあ!?」
「…へへ、お礼のちゅー!じゃあまた大学でね!」
香織は走り去っていった。
「……」
「……」
香織にキスされてしまった。
麻琴の目の前で。
「俊哉…ねえ…」
「……はい」
麻琴の腕がわなわなと震えている。
「なに…?今の茶番劇は…」
「お…俺に訊かれても…」
「…サイッテー!」
「ぇ」
その刹那、バチッという音が頬から聞こえた。
「ま…待てよ…麻琴…」
だが、俺の言葉を無視して歩きだす麻琴。
「お…送るぞ…」
「近寄らないでよ!変態!!」
麻琴は振り返ったかと思うと、顔を真っ赤にして叫び、香織と同じように走り去ってしまった。
ちょっと待てよ…
酔ってて頭の収集が…つかない…
俺の思考はそこでストップしてしまった。