双子の姉妹。 2-6
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「うわー!おっしゃれー!」
「…」
香織と約束した通り、イタリアンの店に夕食に来た。
大学の裏手に最近できたらしく、俺たちのような一見さんがたくさんいる。
席に着くと、おしゃれな従業員がおしゃれな格好でおしゃれなメニューを持ってやってきた。
正直なにがなんだかわからん。
「俊哉、どうしよっか」
「俺はいいから、香織が適当に決めてくれ」
「もう!ムードないなぁ」
「ムードなんているのかよ」
「……鈍感」
なにか香織が呟いたように見えたが、聞こえなかった。
「なあ香織、俺が見るにこの店高そうじゃないか?」
なんとなく、雰囲気でド素人の俺でも察する。
「んー…相場より高いみたいだね」
「俺、そんな金持ってないんだけど」
「俊哉ったらなに言ってるのよ、家庭教師でお金なんか困ることないでしょ?」
俺が実は苦学生だってこと、俺の親戚と櫛森家しか知らないんだよな。
「あたし、俊哉に奢ってもらうつもりでお金全然持ってきてないよ」
「はぁ!?」
つい身を乗り出してしまう。
なんなんだ…最近の女ってみんなこうなのか?
「ねぇ俊哉、どうせならワイン飲もうよ」
俺も男だ。
この調子に乗った女を黙らせる。
「……わかりました」
確かに料理は美味かった。
だが俺は、何か大切なものを失った気がする。
ワインなんか飲みなれてないのですっかり酔ってしまった。
帰り道、駅まで香織を送る。
「俊哉、ありがとう」
「…いえいえ」
香織もフラついている。
「きゃっ」
「うわっ」
そのまま香織は前のめりになった。
しかしそれを慌てて腕を掴んで支えた。
なんとか助けれたものの、頭がぐらんぐらんする。
「……俊哉」
「ん」
聞き慣れた声が聞こえて振り返る。
この呼び捨ては…麻琴…
「なんだ麻琴、お前今帰りか?」
「…そうだけど」
酔っているせいか、最初は気のせいかと思った。
だが、返事をしてくるってことは麻琴に間違いないらしい。
それにしても、すっかり制服を着崩している。
今時の高校生ってのはみんなこんなもんなのか。
俺は意外とノーマルがいいぞ。
「お前、こんな夜まで出歩くなよ。しかも一人で帰るなんて危ないだろ」
「……」
麻琴は何も言わない。
普段は反抗くらいするのだが。
香織もそこで振り返った。