双子の姉妹。 2-3
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今日もドアをノック。
「俺だ」
「合い言葉は!?」
「…はぁ?」
こういうこと、琴音にしては珍しい。琴音の勉強の日にはこんなことあまり言わないのに。
まあ琴音の行動パターンとしては、性格からして読めないこともないか。
「合い言葉は!?」
「……琴音ちゃん、超可愛いー」
棒読みで言ってみた。
そしてすかさず部屋に入る。
「せんせ!だめだよ!」
「今のは合いと愛をかけた高等テクニックだ。これテストに出るぞ」
「…はいはい」
流されたか。
それにしても、昨日のあの反応を見ると麻琴より琴音のほうがよっぽど大人な気がしてきた。
もちろん普段は子どもっぽい琴音だけど、ああいう話になるといつも冷静だったりする。
麻琴が動揺し過ぎてそう見えるのかもしれないが、将来は琴音のほうが恋愛経験豊富になりそうな気がするな。
「せんせ!早く座って!教えてほしいところがあるの!」
「あ、ああ」
琴音はすごく努力家だ。
毎日、俺が出すノルマ以上の勉強をこなしている。高三なんて遊びたい盛りなのに。ひたすら勉強に打ち込んでいる。
そういうとこ、昔の俺に似てるな。
状況が違うから心配はしないが、大学生になって俺みたくはなってほしくない。
「なあ琴音、なんでお前はそんなに勉強頑張るんだ?」
「え?」
聞いてみると、琴音はきょとんとした顔をする。
「せんせと大学通いたいからだよ」
そんなにはっきりと言われると、やっぱりドキッとする。
琴音は純粋に言っていて他意はなさそうだけど、一緒に大学通いたいって言われると…流石になあ。
ちなみに、俺の通う大学はこの地域でもかなりレベルの高い大学です。
自慢じゃないけど。
「そうか、じゃあ最後まで頑張ろうな」
「はいっ!」
「あ、そうだ、晩飯なににする?」
「ううっ!気合い入れた瞬間にご飯の誘惑なんて、せんせひどいよ!」
「悪い悪い」
「じゃあピザで!おっきいやつ!」
「わかった、じゃあ麻琴に伝えてくるからピザのために頑張れ」
「ええー!今大学の話したのに」
「はは」
部屋を出て階段を下りる。
「ん」
なんかリビングが静かだ。普段ならテレビの音がするのに。
どうせならこっそり覗いてみよう。
麻琴のやつ、なにやってんだろ。
壁にくっついて、ドアの隙間からそっとリビングを覗いてみる。
「……麻琴」
驚きのあまり、小さく声が出てしまった。