恐るべき子供たち-7
「もしもし。片桐ですが」
(これは…おじさんだ)
智は狼狽えた。てっきり母親の深雪が出ると思っていたからだ。
純一の顔が思い浮かぶ。1度しか会ったことはないが、怖いイメージしか残っていなかった。
「もしもし?どちら様」
「あの…柚原ですが…」
考えがまとまらないまま、智は答える。すると、一転、純一の声が柔らかくなった。
「トモ君だよね?」
「あ、はいッ」
「由美から聞いてるよ。いつも遊んでくれてありがとう」
智には、笑顔が浮かぶような声だった。
(…これは、おばさんより適任かも…)
「ところで、こんな遅くにどうしたんだい?」
「明日の学校のことで、由美…由美ちゃんに伝え忘れたことがあって」
「それだったら、私が伝えようか?」
「いえ。委員会のことだから、直接本人に…」
「そうか、じゃあちょっと待ってくれ」
受話器からは、保留の音楽が流れ始めた。
(よし…これで完璧だ)
受話器を戻す智の目は、満足感で満たされていた。
エピローグ
あの日から2日が過ぎた日曜日。智と由美は人気のない公園にある、遊具の中にいた。
「アイツ、辞めたのか?」
「うんッ!おかげでね、会社も辞めさせられたそうよ」
智の問いかけに、由美は嬉々とした表情で答えたが、
「でも、なんで早く電話しくれないのよッ!もう少しで危なかったんだから」
一転して、厳しい目を智に向けた。
(…まだ、電話はないの…)
下腹部をさする寺内の行為に耐えながら、由美は部屋の外から聴こえる音を逃すまいとしていた。
そう思って5分以上待ったが、いっこうに部屋近づいて来る気配がない。
「まだ痛いの?」
寺内の顔が間近に迫る。由美は逃げ出したい衝動を必死に抑える。
「…うん、少し」
「やっぱり、お母さんを呼んで来よう」
「あ、まって」
離れようとする手を由美は掴んだ。
「それより、ショートパンツが邪魔してると思うの。センセイ、直に触ってくれない?」
「エエッ!」
寺内は驚きのあまり、奇声を発した。