恐るべき子供たち-2
『恐るべき子供たち』
30分後、2人は帰り路の途中にいた。
「トモ、今日の予定は?」
智は、少し間を置いて空を仰いだ。
「7時から10時半まで家庭教師と勉強だ」
「じゃあ明日は?」
「水泳教室行って、後は家で課題をこなす」
そこまで云って、今度は智が訊ねる。
「そういう由美は?」
「わたしも同じ。バレエは好きだからいいけど、家庭教師がキライ」
小学校高学年にもなれば、誰も似たようなモノだった。
学校の後には、塾や習い事が待っており、中には帰宅する間もなく、コンビニで空腹を癒す子供達もいた。
「家庭教師がって、どうかしたのか?」
何気なく訊くと、由美は怒りをあらわにする。
「アイツ、わたしの身体をジロジロ見てさ、手とか腕とか触ってくるのよッ!」
「…なんだ。そんなことか」
智の態度が火に油を注いだ。
「そんなことじゃないッ!触られる度に、ゾワワーってするんだから」
「だったら、替えてもらえばいいじゃないか」
すると今度は鎮火して俯いてしまった。
「ママにもそう云ったんだけど…有名な家庭教師だからダメだって」
「そうか。どこも似たようなモノだな」
由美の目が智を見た。
「トモのウチも?」
「ああ、東都大の学生なんだけど、うるさい女でさ」
「えっ?女の先生なの」
「そう。こーんな胸してるくせに地味な格好でさ。ありゃ処女だな」
智は両手で胸の大きさをジェスチャーすると、
「トモはやっぱり胸のおっきなコが好きなんだ…」
すねて見せる由美は、自分の胸のあたりを撫でた。
「そういう意味じゃ…」
智は、フォローの言葉を云いかけて何かを閃いた。
「どうしたの?」
様子の変化に気づいた由美が、心配気に顔を覗き込む。
「イケるかもしれない…」
智の目が輝いた。何かを秘めた、そんな目だった。
「ユミッ!ちょっと耳貸せッ」
言葉のままに由美が近づくと、耳元で智が声を落とした。
「だから……おまえは……」
最初は何事かという由美だったが、話が進むにつれ、顔が次第に赤みが差していった。