白銀のたまご〜パチプロチーコの生活-1
人生はパチンコ玉みたいだと、常々私は思う。
万有引力だっけ?
自分が生まれた重さによって上から下へとただただ落下する。
そこでどの釘に当たってどちらへ落ちるかって、些細な別れ道で運命は大きく変わって行く…
私は氷川館千鶴子。
(ひかわだてちづこ)ってずいぶん読みにくい名前だけどチーコで通っていて、その本名さえ知らない人も多い。
…なんてね。
いかにもさすらいのギャンブラーみたいでかっこいいんじゃないか?と自分では思ってたりする。
歳は…26。
でも、2〜3歳は若く見えるし、時々だけどスッピンで買い物なんかに行くと女子高生と間違わる事だってあるんだよ。
職業はパチプロ。
半年前までは販売の仕事をしてたんだけどさ…
服を売っても売ってもちょっぴりしか儲からないし、売らなきゃ食べていけないじゃない?…
もう、ずっとその仕事やってて何だかなぁ…と思っちゃって辞めてしばらくパチンコばっかやってたら、そっちの方が儲かっちゃったから…
こんな事してていいのかなぁと思うけど、とりあえず毎日毎日パチンコばっかやってる。
その方が気楽でいいじゃない。
私って…
よく歌手の浜崎あゆみに似てるって言われるのね。
だから、彼女がバンバン売れてる時なんてさぁ…
服装はもちろん髪型から話し方からしっかり真似ちゃって、お店に立ってるだけで服なんかバンバン売っちゃったんだけどね。
今より少し前の彼女を真似るのがポイントなんだ…
彼女がテレビに出なくなってから売り上げがガタッと落ちちゃってさ…
今までチヤホヤしてた店長も仲間たちも急に態度が変わっちゃって、何だかイヤになっちゃって…
ある意味パチプロの私は私自身でもう偽物の浜崎あゆみじゃないと思ってる。
本物の彼女だって曲が売れるか売れないかキビシイ世界だと思うけど、ギャンブルの勝ち負けって本当にアマくない世界だもん。
彼女の真似してるだけで服が売れるのとはぜんぜん違う。