ピリオド前編-6
ジャージを取ると、さすがに肌寒い。それ以上に恥ずかしさが先走る。
そんなオレの思いなど気にする風もなく、亜紀はジッと見つめていた。
「うん、よく似合ってる」
「そりゃどうも」
「なあに、その云いぐさ」
「何が?」
面倒そうに答えるオレの態度が気に入らないらしい。
「ひとが苦労して選んであげたのに、もう少し云い様があるでしょう?」
普段なら酔った相手の意見など適当にあしらうのだが、つい、云い返したくなった。
「あのさあ、オレ、25だぜ。こんな若いヤツが着るような…」
「何云ってんのッ、まだ25でしょう。それくらいので丁度良いのよ」
亜紀はもっともらしい意見を宣うと、ビールを一気に傾けた。
「…彼女と一緒の時には、それくらいの着けてなきゃオヤジ臭く見られるわよ」
オレを見る目が据わってる。酒を飲むのは知っていたが、からみ酒とは想定外だ。
「姉さん、何かあったのか?」
思わず訊いてしまった。
すると亜紀は、一瞬、表情を硬くしてから微笑んだ。
「何もないわよ。どうしてそんなこと訊くの?」
「いきなり実家に帰ってくるなんて、初めてじゃないか?」
「たまには息抜きしたいなって。だからよ」
笑みを湛えているのが、オレには嘘に思えた。が、本人が口にしないことを探るのも可哀想だ。
オレは話題を変えた。
「…ところでさ、もう服着ていいだろ?」
「ダメよッ、もっとちゃんと見せてよ」
「だったらさっさとしろよ。寒いんだから…」
亜紀はイスから立ち上がると、ベッドに腰を降ろした。
上目遣いな視線。パジャマの合わせ目から覗く胸元。
(ヤバ…中坊かよ…)
まさか反応しちまうとは。
「あらあ〜ッ」
その変化を、亜紀は目ざとく見つけた。
「何、おっきくしてんのよ」
「うるせえよッ」
慌ててジャージを身に着けてると、亜紀はニヤニヤ笑ってる。
「アンタ、マゾ気があるんじゃない?見られてそんなになるなんて」
(くそッ、元はと云えば、自分がやらしておいて。こうなりゃヤケだ!)
オレも酔っていたのだろう。思わず隠していた想いを吐露してしまった。