ピリオド前編-5
食事を終えて風呂から上がる頃には、日付がすでに変わっていた。
久しぶりの実家の風呂場は、リフォームされて昔の面影はなかった。
「何だ、こりゃ?」
脱衣場に置かれた替えの下着。亜紀が買ってきたヤツ。
ストライプ柄のビキニパンツに黒のタンクトップ。
(アイツ、遊んでやがるな…)
一瞬、呆れたが、亜紀がコレを選んでいるところを思い浮かべると顔がニヤけた。
「まったく…」
下着と高校時代のジャージを身に着け、バスルームを出ると2階へ通じる階段を上がった。
上がりきった手前がオレの、奥が亜紀の部屋。
「へえ…」
5年ぶりの自室は、懐かしい匂いに包まれていた。
「そうか、さすがに毛布は替えたのか」
ベッドに腰掛け、周りを見渡した。壁に貼られたあの頃のポスター、本棚に並んだ様々な本、傍らに置かれたバットにグローブ。すべてが過ぎ去った日々を思い起こさせる。
もちろん。このベッドも。
ここから始まった。
幼い頃、オレはいつも亜紀の後を付いてまわっていた。歳は1つしか違わないが、色んなことを教えてくれる姉は、たのもしく思えたものだ。
それが成長するにつれて互いの性の違いを知り、好奇心を持った。
オレはいつしか、亜紀のことを見る度に性的興奮を覚えるようになった。
それは亜紀にもあったのだと思う。だからあの日、このベッドで…。
「和哉、起きてる?」
部屋のドアをノックして亜紀が入って来た。オレは突然のことに慌てた。
「ど、どうしたんだよ?」
「アンタが眠れないんじゃないかと思って、冷蔵庫から失敬してきたの」
その手には缶ビールの入った袋が握られていた。
オレは呆れたように云い返す。
「この下着といい、姉さんには負けたよ…」
「なんで?アンタけっこう胸板有るから、似合うと思って買ったんだけど」
「オレも25だぜ。ビニキパンツといい、遊びで買ったんだろ」
オレは、受け取った缶ビールを半分ほど飲んだ。
すると亜紀は、意外という顔を見せて、
「そんなことないよ。和哉に似合うヤツって、お店3軒廻ったんだから」
「3軒…も?」
自分の缶ビールを開けて飲みだした。
「…そうよ。それよりさ、それ、脱いで見せてよ」
「はあ?何いってんだよ」
呆れた思いで云い返して分かった。亜紀の顔はアルコールで赤く染まっていた。
「だって、買ってきた下着がどんな具合なのか知りたいじゃない」
「おまえ、いい加減に…」
「ね、和哉お願い」
たかが下着をみるために、オレに両手を合わせるとは完全に酔ってやがる。
「わかったよッ!」
そう思いながらも邪険に出来ないオレは、仕方なくジャージを脱ぎだした。
亜紀は机のイスに腰かけた。