ピリオド前編-14
「姉さん、あっちに行くよ」
いくら呼び掛けても、一向に目を覚ます気配がない。
「しゃあないな」
オレは亜紀の身体をすくうように抱え上げ、寝室に運んだ。 思った以上に軽い、両腕の感触に少し驚いた。
布団の上にそっと降ろし、オレは亜紀の上体をゆっくりと持ち上げた。
(服のまま寝かせる訳にはいかないな)
背中越しに、薄いブラウスのボタンを外していく。
オレに体重を預けた亜紀の身体の柔らかさ。脇の下からまわした両腕に触れる胸のふち。
そしてなにより、甘く懐かしい体臭が、酔ったオレを刺激する。
(そういえば、寝る時は外してたな…)
どうにかブラウスを脱がせたたオレは、ブラジャーのホックに手をかけた。
露になった亜紀の乳房。2年前の記憶が甦る。夢中でむしゃぶりついたあの夜が。
(何を考えてんだッ!恥を知れッ)
洗ったばかりのトレーナーを着せ、スカートとストッキングを脱がせると亜紀の上に布団をかけた。
「これでよしと…」
服をハンガーにかけたオレは、押し入れから毛布を1枚持って寝室の明かりを消した。
「じゃあ姉さん、おやすみ」
寝室の扉を閉めて、リビングへ向かった。
「さて…」
ソファの上に毛布と枕がわりのクッションを投げおき、キッチンの冷蔵庫から、最後の缶ビールを取り出した。
「ふう…」
苦い味が口の中に広がった。頭は酔いで十分にしびれてるのに、気持ちは昂って眠れない。
(まったく、情けない男だ…)
自己嫌悪に陥る。亜紀の身体や匂いに、オレのモノは硬くなっていた。
…「ピリオド」前編 完…