魔性の仔Last-9
「おいッ!誰もいないのかァッ!」
馬遥遷が地下から消えて30分あまり。刈谷は闇の中、消えた方向に向かって叫び続けていた。
「くそッ…喉がガラガラだ…」
首から下に力が入らないので腹から声が出ない。喉だけを使った声では直ぐに枯れてしまう。
刈谷は、これ以上叫んでも無駄だと思った。
「それにしても…」
闇の中で物思う。
(祭式場にオレをつなぎ止め、奴らは何をやるんだ?それに祭式とはなんだ…?)
馬遥遷の口ぶりからすれば、真弥を取り戻して中尊寺や他ひとりを此処に連れて来るようだ。
とすれば、彼らの行う祭式には2人も関わっているのだろう。真弥と自分をメインとする祭式とは何なのだろう。
刈谷は思考を巡らせ、様々なシチュエーションを照らし合わせてみた。
そして、ひとつの結論に達した。それは彼自身が、先日受けた光景だった。
(真弥は…オレと交わろうというのか…)
少女の秘裂を愛液であふれさせ、刈谷のペ〇スを貪るように受け入れた真弥。
それが、祭式と重なって思えてしかたがない。
(しかし、それが現実なら…)
刈谷は悲しくなった。このような場所で神の如く奉られ、囲われの身で一生を終える少女の運命を。
ちょうどその時、先ほど馬遥遷が来た方向から再び足音が聞こえた。それもひとりでない、複数の人間のモノだ。
(いよいよ来たか…)
刈谷は唾を飲んだ。祭式がどのようなモノであれ、この状況からすればタダですむわけが無い。
岩壁に明かりが映り込んだ。1歩、また1歩と足音が迫って来る。
(こんな…広い場所だったのか)
忍び込む明かりによって、刈谷は初めて自分の居る場所を認識した。直径10メートル、高さ3メートルはゆうに有ろうドーム状の室。
その中央に置かれた石台に自らは横たわっている。
(入口が二つあるのか…)
明かりに照らされた真反対には、もうひとつの入口が見える。他にも、岩壁に作り付けられた棚状のモノや、動物の彫刻が施されていた。
そして視界に馬遥遷と鵺尊の姿が見えた。金糸で織られた衣装や頭の被り物は、どこか日本とは異なる祭事衣装に思えた。
刈谷は、彼らの後方に付く従者に目をやった。
「貴様ッ!それはッ」
従者は手に抱えていた。ひとりは女の生首を。ひとりは裸体の女を。刈谷には、それが誰なのかすぐに分かった。
「てめえらッ!全員ぶっ殺してやるッ!」
コメカミに青筋を立て、これ以上ないくらいに怒りをあらわにする刈谷。
だが、馬遥遷は神妙な面持ちで云った。