魔性の仔Last-7
「そろそろ良いだろう」
「そうだな…」
男逹の身体が早紀から離れた。
「…あ…うう…」
強力な催淫剤により、自らの意志に反して慰みものになることを悦び、疼く身体を男逹に弄ばれた。
その秘裂や尻の穴、そして口の端から、男が吐き出した白濁液にまみれている。
「おまえはこいつと中尊寺を連れて、ひと足先に戻れ」
「わかった」
男の1人は頷き、両肩に中尊寺の死骸と裸の早紀を抱えて別宅を離れ、停めてあったクルマに2人を押し込むと、自らの運転で山道を走り去った。
「これでひと安心できる…」
男のひとりが、クルマを眺めつつそう云うと、
「その台詞は、部屋を片づけてからにせい」
もう一方の男がたしなめるように云った。
「確かにそうだ」
部屋の中や廊下には、おびただしいほどの血や排泄物、体液が散乱している。
「では…」
合図の後、2人はキッチンに向かった。
調理台には鶏肉のぶつ切りや野菜など、準備途中のままになっていた。
ひとりが鍋に油を注ぎ、ガスに火を点けた。
「これでいい…」
火を確認した男逹は、キッチンを出て1階の窓や玄関を解放してから別宅を後にした。
やがて鍋の油は沸騰し、白い煙をまきあげはじめた。
さらに油が煮え立つにつれ、煙も量を増やし、やがてキッチン全体を包み、遂には油から火が上がった。
男逹が逃げだして15分後のことだった。
炎は瞬く間に勢いを増してキッチン全体を呑み込んだ。
さらに開け放たれた窓やドアから入る空気が燃焼を助長し、一気に屋敷全体に炎が回った。
「これでしばらくは時を稼げるな…」
山の頂き付近。夜空を背景にして映る炎の輝きに、男のひとりが振り返る。
闇夜を焦がす赤い炎の光は、一種、幻想的な光景に思えた。
「急ぐぞ…」
「ああ」
男は光から視線を外し、再び駆けだした。暗闇の中、道なき道をケモノのように、2人は山を降りて行った。