魔性の仔Last-12
「…は…ああっ…ん…」
全身に返り血を浴びた真弥が変化を始めた。呼吸が乱れ、鼓動が速まっていく。彼女の中にある“本性”が甦りだしたのだ。
その変化に鵺尊は満足気な顔をすると、石台に近づいた。
「どうだ刈谷?仲間を目の前で殺された気分は」
「貴様…殺してやる」
刈谷は歯噛みするしかない悔しさに、涙を流して鵺尊を睨む。
「怒れ、もっと怒るがいい。それが我らには必要なのだ」
奇妙な言葉を残して石台から遠ざかり、入れ替わるように真弥が近寄って来た。
(一緒だ…あの夜と一緒だ…)
刈谷は目を見開いた。彼を見つめる真弥の目は、妖しい赤で輝いていた。
「ようやく、あなたと一つになれるわ…」
石台の前に立つ真弥が妖しく笑った。その口許から上下に鋭い牙が見えた。
「やめるんだ真弥。こんな事したって…」
「何故?あなたの望んでることでしょう」
真弥の手が、刈谷の服を1枚づつ剥がしていく。
「あの日、あなたがわたしを保護した夜。あなたは、わたしの匂いを嗅いだ時に女を感じたハズよ」
「真弥…まさか…」
驚きの表情で見つめる刈谷に対し、真弥は笑みを浮かべた。
「わたしは、あなたの望みを叶えてるだけよ」
「では、夜の山道での出来事はすべて仕組まれたことなのか?」
「…何故、逃げ出したのかは覚えてないわ。何故かしらね?こんないい処なのに」
(覚えてないだと…)
補うように鵺尊が云った。
「この方は、祭式から子を産むまでは正気でおられる。そして過去の記憶を捨て去られるのだ。次の機が訪れるまで…」
「なんだと…」
(逆行性健忘じゃなかったんだ。すべてはこの為にあったわけか)
純血を保つためだけに囲われ、正気を失えば、自らが産んだ子供達の姿に怯えて生き続けてきたとは。
「なんて哀れな生き物なんだ…」
上半身が脱がされた。真弥の手がズボンのベルトを外しに掛かる。
「あなたから見ればそうかも知れないわね。でも、わたし達はこの方法でしか生きてこれなかったのよ」
そう云うと、一気にズボンを取り去り、最後の1枚を脱がせた。
「さあ、始めましょう」
石台に登りあがると、刈谷の上に馬乗りになって身体をこすりつけだした。