ハロウィン-4
「ただい…」
「おかえり、慎吾君!」
さっきの電話の声とは真逆のそれはそれは楽しそうなつむぎは、俺の腕をグイグイ引っ張ってテーブルの前に座らせた。
「ジャーン!見て見て」
そこにはただの煮たカボチャ…ではなく、ほっこりと湯気のたつ料理があった。
「パンプキングラタンとパンプキンスープでーす」
「…」
上手く反応できず。
「ね、すごい?あたしすごい?」
「おぉ、おー」
「…何、その反応」
「そりゃだって、カボチャ煮るって言ってたから。てっきり四角く切ったゴロゴロした煮カボチャが出てくるもんだと…」
「それじゃ冬至じゃん」
「…だな」
俺とつむぎは思考回路がよく似てる。
最近そう思う事が増えた。
「さ、食べよっか」
「あぁ、これお土産」
怒られない為の保険として用意したプリンを差し出すと、思った以上に喜んでくれた。
「すごい可愛い!ありがとう、慎吾君」
そうなんだ。
こいつはどんな小さな事でも喜んでくれる。
そして俺は、その喜んだ顔がたまらなく好き。
だから一緒にいる。
例えめんどくさくても喧嘩が絶えなくても、嬉しいと言って笑うつむぎが見れたらそれでいいのだから。
つむぎが作ってくれた料理はお世辞抜きでとても美味しかった。カボチャの甘さも温かい湯気も、心地良くて――
「ところで、その包みは何?」
「商店街の福引きの景品。やるよ、いらないし」
「ありがと。開けていい?」
「どうぞ」
ガサガサと包装紙を破る数秒後、俺は激しく後悔する事になる。
「慎吾君、見て!」
「…げ」
つむぎが嬉しそうに掲げたのは、商店街オリジナルの来年の日めくりカレンダーだった。
「嬉しーっ!明日にでも買いに行こうと思ってたんだ!!」
「へー…」
プリンをあげた時より百倍は嬉しそうじゃねえか。
俺もなんてもん引き当ててんだよ。これならハズレのポケットティッシュのがよっぽどマシ。
つむぎは早速マジックペンを取り出し、何やら書き込み始めた。