ハロウィン-3
こうして一人になってあの記念日女から解放されてるってのに、結局あいつの事を考えてしまう俺もどうかしてる。
今頃俺を喜ばせるべくウキウキしながらカボチャ煮てるんだろう。でも煮たカボチャだもんな、俺上手く喜ぶ自信ないわ。かと言って喜ばなきゃあいつ絶対怒るし、何か買ってってやるか…
一通り商店街をウロウロしたところで、無難にケーキ屋さんに立ち寄る事にした。
甘い匂いと目がチカチカするくらいきらびやかな店内にもやっぱりあるハロウィングッズ。ショーケースの中にも…
「お」
思わず声を出してしまった。
カボチャをかたどった陶器に入れられたパンプキンプリン。
これは絶対つむぎが喜ぶ!
例え煮たカボチャを出された俺が満点の喜び方ができなかったとしても、それを帳消しにしてくれそうなルックスを持ってる。
すぐに二つ購入して帰ろうとすると、
「こちらどうぞ」
何やら紙を渡された。
「商店街のハロウィン記念の福引き券です。向かいの特設コーナーでやってますので、良かったらどうぞ」
「…はぁ、どうも」
受け取るけども、ハロウィン記念ってなんだ?
どこもかしこもどいつもこいつも記念記念って…、そんなに記念って大事か?
それとも俺がずれてるのか?
そんな疑問を持ちつつ、言われた通り特設コーナーに向かった。
一等は商店街の商品券か…
歳末セールみたいな豪華景品ではないけど、どうせやるなら狙いたいな。
大袈裟に腕まくりをして、ハロウィン柄に飾り付けられた箱の中に手を突っ込んだ瞬間
『♪♪♪♪』
携帯の着信音が鳴り響いた。
このタイミングの悪さ…
うんざりしながら右手でクジを引き、左手で携帯に出る。
「もしも…」
『遅い!』
やっぱりつむぎだ。
『今どこ!?もうできたんだけど!』
適当に引いた三角クジを係のおじさんに渡した。
「今商店街」
「おめでとうございます!三等の―――」
『早く帰ってきてよ!』
おじさんの声はつむぎの声にかき消された。
「すぐ帰れって、徒歩だから時間かかる――」
『走って帰ってきて!!』
俺の様子と携帯から漏れてくるつむぎの声で事態を察してくれたおじさんは、無言で俺に景品の包みをくれた。
「分かった、すぐ帰るから」
そんなおじさんに一礼して、包みとプリンを抱えてダッシュで家路を急いだ。