お江戸のお色気話、その1-4
「あたしは、旦那様に言われて仕方なく
その家の扉を叩いて中に入ったんですが・・」
「それで金さん、どうしたい?」
煙草を燻らせながら、老人が目を細め興味ありげに聞く。
「へえ、その家は元武家と言っても金の催促を受けるくらいだから
落ちぶれて、本当に質素でしてね・・物もあまり無く、
こういうのがあたしは本当に苦手なんですが、
でも言いつけですから行きました」
「それで、その相手はどんな相手だい?」
「それが、元はお武家様の奥方らしい人で、とても美しい人でした、
そして障子の後ろで、あたしを恐れながら心配そうに見ている
母親に似て美しい娘がいましてね、
でも二人とも、その何というか
身なりは質素でなんですが綺麗でして、
こんな親子を見たのは初めてです」
「ほうほう・・」
「あたしが取り立てのことを話すと、
(せっかくお出でくださったのですが、
お支払いできかねます、どうかお引き取りを)
と気丈に言うんですよ、
さすがのあたしも女だと見て、その時はかっとなって言いましたね」
「ほお、なんと言ったのかね」
ここで、老人は何故か興味を持ったらしく、身を乗り出してきた。
すると、皆もそれに気が付き、金吉と老人を交互にみつめ、
その成り行きを注視していたのである。