身代わりの果て-2
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彼があの子…そう佐伯由里子に好意を持っていることはすぐに分かった。
それはたぶん、私が同じように恋をしていたからだと思う。
彼が佐伯さんの姿を目で追う度に、私の胸は潰れそうなくらい苦しくなった。
そんなことが続いたある日、佐伯さんが自宅で大怪我を負い救急車で搬送された。
そしてあとから聞いた話によると、大怪我を負った佐伯さんを助けだしたのは彼だったと言う。
警察沙汰にまでなった事件だったけど、夏休み前日だったこともあり、さほど騒ぎにはならなかった。
そしてその事件以降、彼の様子が明らかにおかしくなった。
夏休みに入ってからの彼のやつれようは、ひどいなんてものじゃなかった。
私はテニス部の顧問をしているから、夏休み中も学校に来ていて、彼とも顔を合わせていたんだけど…
日に日に痩せ細って、目ばっかり鋭くなって、いつも屋上で遠くをぼんやり見てて…
そんな彼に、何度か声を掛けてみたけど、いっこうに聞こえていない…
まるで廃人だった。
そんな彼を前にして、私は手を差し伸べないわけにはいかず、部活終わりに彼のアパートに寄った…
その時、どうしようもなく荒れて弱っていた彼と………体の関係になった。