やっぱすっきゃねん!VK-7
佳代がコンビニを出て40分ほど経った時刻。彼女のとなり部屋からけたたましいアラーム音が鳴りだした。
「う…」
音はわずかな時間鳴っただけで、持ち主である修はすぐに目を覚ました。
「…ンーーッ」
ベッドから起き上がると大きな伸びをして、
「さてと…」
部屋の片隅に置いたバットを握って階段を降りていく。日課である毎朝30分間の素振りをするために。
修はキッチンに寄り、冷蔵庫にある麦茶入れを取りだし、コップに注ぎ入れて一気に飲んだ。起床時や運動前に水分を摂るよう一哉からきつく云われていたからだ。
「ふう…」
使ったコップを流しに置こうとした時、修はすでに使われたコップを見た。
「…アレ?これって…」
修は慌てて廊下を走ると階段を駆け上がった。何か感じるモノがあったのだろう。
ドタドタという踏み音を構うことなく、上がり口にある姉の部屋に飛び込んだ。
「姉ちゃ…!」
ぐちゃぐちゃになったブランケットが置かれたベッドの上に、誰も居ないのを修は見た。
「こんな朝から何処行ったんだ…」
部屋の中に踏み入り、辺りを見回すと、机の上のノートに気がついた。修はすぐに机に近寄りノートを覗いた。
「これって…」
短い文。ただ、彼が血相を変えるには十分だった。
修はノートを引っ掴み、姉の部屋を飛び出した。そして、再び足音を立てて階段を降りると、両親の寝室の前に滑り込む。
「父さんッ!母さんッ!大変だよ」
寝室のドアを思い切り叩く修。中で寝ていた健司に加奈も、その音に目を覚ましてしまった。
「いい加減にしなさいッ、修。何なの?こんな朝早くから」
ドアが開き、母親の不機嫌そうな顔が現れたが、修は切羽詰まった様子で叫んだ。
「ね、姉ちゃんが、居なくなったんだッ!」
「はあッ?居なくなったって…」
「それにホラッ!」
修は加奈にノートを突きだした。そこには、一文で“ちょっと出てくる”とだけ書かれていた。