投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 366 やっぱすっきゃねん! 368 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!VK-5

「所詮、地区の優勝です。ここから先…特に準々決勝あたりからは、実力だけでない、運も味方にしないと勝てない。
 だからこそ、指揮官が今まで以上に厳しく選手のプレイを見つめてやらないと」

 一哉の言葉を聞いて、葛城は恥かしくなった。今回の優勝で、おそらく永井も自分も安心していた。
 そのことをズバリと指摘されたのだ。

「分かりましたッ、明後日からの4日間、あの子逹が悔いを残さないよう頑張りますッ」
「その意気ですよ」

 一哉が微笑みかける。
 2人は再び歩き出した。飲み屋街から外れた場所でタクシーを拾うと、別の場所へと向かった。





 優勝から一夜明けた朝、佳代はずいぶん早くに目が覚めた。カーテン越しに見える窓の外は、ようやく明るくなりだしたくらいだ。

「…まだ、こんな時刻…」

 寝ぼけ眼で目覚まし時計を確かめた佳代は、ひとつため息を吐くと、ブランケットを頭まで被って2度寝を試みる。
 しかし、寝返りを繰り返すだけで、再び眠ることは出来なかった。

「…やめた」

 結局、諦めたてベッドから這い出ると、軽く伸びをしてから階下へと降りていった。

「…ふ、ンン…」

 冷蔵庫から麦茶を取りだし、ダイニングテーブルに置いたが、彼女はイスに腰かけて頬杖えをついたきり動かない。まだ、頭は覚めていないのだろう。

「ふぅ…う…」

 アクビと共に、覚めだした頭に浮かんだのは昨夜の苦い記憶だった。

「姉ちゃん、ダメだよ。今日も1点取られたじゃん」

 それは夕食時、弟の修が発した言葉から始まった。

「修ッ、そんなに云わないの。佳代だって精一杯やってんだから」

 母親の加奈に咎められると、いつもなら引き下がる修なのだが、この日は違った。

「母さんは姉ちゃんの、“本気”で投げたところを知らないからそんなこと云うのさッ」

 えらい剣幕で加奈に喰ってかかったのだ。

 佳代には、そのひと言が気になった。

「わたし、本気で投げてないように見えた?」

 弟に対してポツリと云った。

「アンタ逹から見て、そう見えた?」

 まっすぐに弟を見る目は悲しみも怒りもない、ただ、問いかけるようだ。
 その目に誘われたのか、修は俯き加減で口を開いた。

「…云い方が悪かったのなら謝るよ。でも、大会前のバッティング練習で、まともに打てるヤツがいなかったじゃん」

 喋りだした修は、気持ちの抑えが利かなくなった。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 366 やっぱすっきゃねん! 368 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前