やっぱすっきゃねん!VK-18
「ねえ、姉ちゃん、何て云ってきたの?」
加奈は、それには答えずキッチンに居た健司の傍まで行くと、
「ちょっと聞いてよッ。佳代ったら海まで歩いて行ったうえ、足が痛くて動けないから迎えに来てだって…呆れちゃうわッ」
修の足が止まった。
(家出じゃなかったのか…?)
彼は、意味が分からず考え込んでしまった。
憤慨気味の加奈。しかし、健司の方は気にした様子も無い。
「仕方ないな。迎えに行こう」
そう云うと、エプロンを取ってキッチンを出て行った。
すると、
「待ってよ。私も行くわ」
加奈も後を付いて行こうとする。
「でも、夕食の準備中だろう?」
「材料を切っただけだからいいわよ。それに、あの子をに怒鳴りつけなきゃ気がすまないわ」
意気まく加奈に、健司はしばし考えると、キッチン入口で立ち尽くしていた修に云った。
「修。ちょっと姉ちゃんを迎えに行って来るから留守番を頼む」
父親の声に修は我に返った。玄関を後にしようとする両親の元へと駆けて行く。
「ち、ちょっと待ってよ!ボクも連れて行ってよッ」
「おまえは留守番をしてなさい」
付いて来ようとするのを健司は止めた。
「おまえは、佳代が見つかったことを直也君たちに知らせてやりなさい」
「父さん…」
健司は分かっていたのだ。この件で、大勢の人に迷惑を掛けたことを。
「じゃ、頼んだぞ」
修は、云い残して出て行く2人を見送ると、すぐにリビングにある電話の受話器を取った。
その顔には、笑みがこぼれていた。
健司の運転するクルマは、夜の県道を西へとひた走る。このまま40分も進めば、目的地に到着するだろう。
道の両サイドからは、にぎやかしいほどの明かりが視界に飛び込んで来る。それに反して車内は、静まりかえっていた。
流れ行く道。
静寂に耐えきれずに、加奈が沈黙を破った。
「まったくあの子ったら、おかしな事やらかして。小さい頃から変わってるのよッ」
そう云うと運転席の方を見た。健司は、賛同とも取れる相づちを打つと、
「わざと、変わったように見せてるのかも知れないね」
「…それってどういう意味?」
独り言のように呟いた。