やっぱすっきゃねん!VK-17
「修。佳代は一緒じゃなかったのか?」
「…知らない…」
つっけんどんな言葉を残し、修はキッチンから消えた。そんな態度を、2人は不可解に思った。
(…クソッ、父さんも母さんもオレの云ったことを信じてくれないや…)
ベッドに寝転がり、天井を見つめる修は唇を噛んだ。
あの時、自分が親に対して、もっとアピールすべきだったと後悔の念が浮かぶ。
そんな折り、下から声が掛かった。
「修ゥーーッ!電話ァ」
階下からの母親の声。
「クソッ!」
修は半ば諦め顔で階段を降りていった。
「誰?」
「直也よ」
たった今、わかれた直也からの電話。修は戸惑いながら受話器を取った。
「…もしもし」
「修、オレだ、直也だ」
「はい…」
躊躇いがちな声。直也は構わず、伝えることを興奮気味に話した。
その途端に修の顔が、みるみると驚きに変わった。
「なんですってッ!海に?」
直也の説明では、夕方、自宅に帰り着いた秋川が留守電に気づいて電話して来たそうだ。
「秋川が昼間に会ったそうだ」
「そうですか…」
修は、受話器を戻すとリビングを飛び出しキッチンに向かった。
「父さんッ!母さんッ!話があるんだッ」
焦り声に、健司も加奈も振り返る。
「なによ修。そんな、おっきな声出して」
「3年生の人が昼間、〇〇町辺りで姉ちゃんを……」
その時、再び電話が鳴り出した。加奈は“はいはい、ちょっと待ってねえ”と、修の横をすり抜けてリビングへ向かった。
「はい澤田…あら佳代」
加奈の口から姉の名が放たれた瞬間、修はリビングに駆け込んでいた。
「今、何処にいるの……えっ?〇〇海岸…」
居る場所を聞いた加奈の顔がみるみる変わった。
「…アンタ、そこって二つ向こうの市じゃないのッ!そんな処まで何しに……えっ?動けないから迎えに来てって…」
加奈の顔が呆れ顔に変わった。
「電車とかタクシーで……もうッ、分かったわよッ。そこで待ってなさい」
受話器が戻された。キッチンに戻って行く加奈に修が付きまとう。