やっぱすっきゃねん!VK-12
同時刻。佳代の捜索に出ていた5人は、再び直也の自宅前に集まっていた。
「…アイツ、いったい何処に消えたんだ…」
お互いが焦燥の顔を見合せる。ショッピングモールやスーパー、学校など、立ち寄りそうな場所を手分けして捜したのだが、姿を見つけられなかった。
「直也さん。どうします?」
修の声が上ずった。不安が気持ちを焦らせる。次の手を考えている直也に対し、達也が意外な言葉を発した。
「とりあえず、昼メシを食いながらどうするか考えないか?」
「昼メシだと…?」
直也の顔がみるみる怒りに変わった。この急を要する時にメシの心配など、冗談にも程があると思えたのだ。
しかし、達也は真面目に答えた。
「捜す範囲を拡げるにしても、この人数じゃ無理だ。それに、メシを食っとかないと、頭も力も云うこときかなくて、見つかるモノも見つからないぞ」
達也の提言に、淳と稲森が頷いた。
「直也さん、ボクも達也さんに賛成です」
修に云われて、直也は気持ちを切り替えた。
「じゃあメシにしよう。オレん家で昼メシ食いながら考えよう」
そう云うと、皆を自宅に招き入れた。
佳代が連れて来られたのは、先ほどの県道から1本中に入った道沿いに建つ小さなビルだった。
その1階が目当ての場所で、ここは秋川の両親が店舗を借りて、洋食店を営んでいた。
3人は店の奥の部屋に通された。小さなテーブルとイスだけ置かれた部屋。おそらく、スタッフルームなのだろう。
「お待たせ〜ッ」
ほどなくして、秋川の母親が3人前の料理をテーブルに置いた。大盛りのオムライスにコンソメスープ。
母親は料理を配膳しながら、佳代の顔を覗き込む。
「この子が“昼メシ3人前用意してくれ”って云うから、てっきり男友達と思ったんだけど、まさか女の子を連れて来るなんて」
「母ちゃん、勘違いすんなよッ。コイツは野球部の仲間なんだよ」
「エッ、この子、野球部なの?」
息子の言葉に、母親は驚きを隠せない。佳代は慌てて席を立つ。