やっぱすっきゃねん!VK-10
「…す…すいません…これでも…急いだん…ですけど…」
息も絶え々で謝る修。それを見た直也は“ちょっと待ってろ”と家に戻っていき、何かを持って出てきた。
「ホラ、これ飲め」
差し出されたのは麦茶の入ったコップ。
「…ありがとうございます…」
修は受け取って一気に飲み干した。
「もう1杯飲むか?」
「いえ…それよりも、電話の話を…」
「ああ、佳代が家出したって云ってたな…」
「そうなんですッ!姉ちゃんが朝から居なくなってッ」
必死の形相で昨夜からの経緯を話す修。
しかし、日頃から佳代を見ている直也にすれば、にわかには信じ難い。辛いことで落ち込むことは有っても、逃げ出すとは思ってなかったからだ。
「休みだから、友達とでも遊びに行ったんじゃないのか?」
「でも、こんなの残すなんて絶対変ですよ」
修は、家から持ち出した佳代のノートを直也に見せた。
「い、今までなら、晩メシ喰ってる時に予定なんか云ってました。こんなの初めてです…」
「確かにアイツらしくないな…」
ノートの中身に、直也の顔が厳しくなった。
(しかし、あまり人間を増やすのも後々、面倒だし…)
腕組みをして、しばらく悩んだ末に、
「とりあえず、達也に淳、省吾に応援を頼もう。それから散らばって探すんだ」
「ハイッ、お願いしますッ!」
直也の呼び掛けにより、すぐに3人が集まり5人となった。
「とりあえずアイツが行きそうな場所を探そう。見つけ次第、オレの携帯に連絡してくれ 」
5人は一斉に散々になって走りだした。
「あちィ…」
被った帽子はすでにビチャビチャに濡れ、身体も汗だくで気持ち悪い。佳代が家を出て、すでに5時間が経過していた。
痛いほどの日射しが容赦なく照りつけ、気温は30度をとうに超えている。
朝方のワクワクした気分など、消え失せていた。
「…クルマならちょっとなのに…こんなに掛かるなんて」
西へと進む直線路は遥か先に見える小高い丘へと続いている。静かだった道は、いつの間にかクルマで溢れていた。
(そろそろ…お昼食べないと…)
腕時計の時刻は11時半を過ぎている。佳代は進む先にあったファミレスのドアを潜った。
しかし、店内はすでに家族連れやカップルが席を占領し、空席はわずかしかなかった。