浦島太郎-9
よく見れば、それは点々と先に続いていた。
血の跡を目で追う。
その先にあったのは、人。
人が転がっている。
それはピクリとも動く事はない。
…そう、死んでいる。
なのに、通り過ぎる人々は、誰も何ら気にしないでその横を行き交う。
時には、踏ん付けたりもしていた。
どくん。
踏ん付けた人は、訝しげに足元を見る。
首を傾げて、去って行く。
どくんどくん。
どくんどくんどくん。
嘘だ。
そんな、馬鹿な。
男は頭を抱えて後退った。
何だ、あれは。
見えていないのか、あの死体が。
あんなに…、あんなに目立つというのに。
見えて…
男は思わず走り出していた。