浦島太郎-8
自分の行動に翻弄される世の中。
何でも好きな事を出来る自分。
誰にも咎められない。
男の思考は最大の高みへと到達した。
そうだ、自分は浦島太郎なんてものじゃない。
神だ。
自分は神なんだ。
男は信じて疑わなかった。
自分は神であると。
ぴちゃっ。
ふと、耳に響いた水音。
男は顔を地面へと向ける。
男の足は水溜まりに入っていた。
赤い赤い、鮮血の水溜まり。
いきなりの事に驚いた男は、瞬時に身体を血溜まりから移動させた。
どうしてこんな所に。
人通りも少ないわけではない。
ぱしゃっ。
ぱしゃっ。
皆が血溜まりを何事もないように踏んでいく。
まるで、そこに存在してはいないかのように。
背筋がすうっと寒くなる。
そんな。
いや、まさか。
血溜まりを黙って見つめる。