浦島太郎-4
何をしても許される。
例え、相手が死んでしまっても。
男の周りはいつの間にか赤く赤く染まっていた。
動く度にぴちゃぴちゃと水音が響く。
それが男の興奮を更に掻き立てた。
ボキンッ。
何度目か分からない、独特の音。
悲鳴。
苦痛に歪み、涙と鼻水と涎と流血でぐちゃぐちゃになった顔。
男の背中に、ゾクゾクと快感の波が走る。
ああ、地獄ではない。
此処は、天国だ。
そう男が思った瞬間、目の前の景色が一変。
雑居ビルの建ち並ぶもと居た世界へと戻っていた。
服はちゃんと着ている。
返り血も見当たらない。
なんだったんだ、今のは。
男の思考はピタリと停止し、暫くそこに座り込む。
人々が足早に男の横を通り過ぎた。
ふと、違和感に気付く。
本当に此処は、自分のもと居た場所だろうか。
特に大きく違うわけではないのだが、所々はやはり違っているように思えた。
ゴミ箱に捨てられていた夕刊を発見して自分の手に取る。