浦島太郎-11
目の前にトラックが迫る。
やめろ。
やめろ。
来るな。
来るな。
来るんじゃない。
どんっ…。
男の身体は宙に浮き、落下した瞬間に同じトラックの前タイヤが目に写った。
自分を誰だと思っている。
自分は…
ぐちゃりという何かを潰したような音を最後に、男は闇の旅路へ旅立っていった。
こんな体験をした事はないだろうか。
何もないところでつまずいて転んだり、何かを踏み付けたように思ったり、何かに滑ったり。
もしかしたらそれは、男のように浦島太郎のような体験をした奴らの死体が、誰にも見つけられずに転がっているからかもしれない。