浦島太郎-10
冷や汗が顔から吹き出して、滝のように流れ出る。
違う。違う。違う。
あれと自分は違う。
だって自分は神だ。
あんなボロ雑巾のようになるなんてあり得ない。
…それとも。
あれが、神の成れの果てだとでも言うのか。
自分の、成れの果てとでも。
男はがむしゃらに走った。
何処に向かっている訳ではないが、只ひたすらに走った。
目蓋の裏にこびり付いて離れないあの死体。
人にぶつかるのも構わずに走り抜ける。
心に棲みついた不安が少しでも無くなるように。
あれと自分は違う。
自分は神だ。
神だ。
違う。
あれとは違う。
あれとは…
突然人にぶつからなくなった。
変に思って立ち止まれば、耳に聞こえるエンジン音。
男はいつの間にか車道に出ていた。