不安に溺れて-2
世の中の女はたいてい世話好きで、みなみもたぶんにもれず俺に世話を焼くことがあった。
でもまだみなみの場合、それが押しつけがましくない分負担ではなかった。
「佐伯さんの病院帰り?」
『あぁ…』
「どうしてるかと思って来てみたんだけど… 佐々君、相変わらずひどい顔してるよ…」
『そんなこと、自分でも分かってるよ!』
俺は機嫌の悪さも隠さず、吐き捨てるようにそう言った。
今の俺は、うまく感情のコントロールが出来ない程、心がささくれ立っていて、悪意のないみなみにさえ辛く当たってしまう。
でもみなみは、そんなこと気にも止めてないわ…という風に首をすくめてみせると、
「その顔じゃ、ご飯もろくに食べれてないんでしょ? 佐々くんの好きな上海楼のあんかけ焼そば買ってきてあげたから、温かいうちに食べるといいよ」
…と言葉を続けた。
上海楼は、俺とみなみが行きつけの中華の店だった。
あんかけ焼そばが絶品で、いつもの2人の定番メニューだ。
今の弱り切った俺には、みなみのおせっかいが、痛いほど染みる。
みなみの差し出した温かい焼そばの包みを、右手で受け取ると、俺は左手でグイッとみなみを抱き寄せた。
小柄で程よくふっくらとしたみなみの体から、鼻腔をくすぐる甘い花の香りと、優しいぬくもりが伝わってきた。