佐々の苦悩-1
―――8月
「――もうやだぁ、佑介ったらバッカじゃないの?」
私は佑介の話に、涙で顔をクシャクシャにして笑い転げていた。
『俺、由里子の為にわざわざ来てやってんのに、バカは失礼だろ?…ってか、由里子は俺に、今より100倍感謝しろ!!』
「え―――、私、毎晩寝る前、佑介の家の方角に、感謝のお祈りしてるよ!!」
『おまえ―――泣かすぞ!!』
「キャ―――、看護士さーん!!」
『由里子―――声デカイ!また怒られっから…』
「『反省!!……あははははっ!!!』」
私と佑介は、こうしてからかい合って、毎日夕方の1時間を過ごしていた。
佑介と過ごす何でもない時間が―――今の私にとって、何もかも忘れられる時間でもあった。
♯♯♯
『あの2人ってホント仲いいわよね!私が病室にいたって、構わず楽しそうにイチャイチャしちゃって、こっちがドキドキしちゃうわよっ。』
「あの年頃のカップルじゃ、頭ん中Hなことだらけでしょ!ほら…それに佐伯さんって、また特別に可愛いから…彼も放っとけないんじゃないの?」
俺がナースステーションのそばを通り掛かった時、そんな看護士の聞き捨てならない話が、耳に飛び込んできた!