佐々の苦悩-7
俺は、その赤い血の色を見た瞬間―――あの事件現場の記憶が甦り、激しい動悸に襲われた。
そして、ここが一体どこで―――?
自分が、何をしているのか―――?
―――分からなくなった…
クソッ―――俺の頭はついに狂ったか?!
考えてみたら、事件以来飯もろくに食べれていないし、夜もまともに眠れていなかった。
毎晩、病院を出たあと、どうやって家に辿り着いたのかさえ、記憶にないことがある。
自分でもヤバイと自覚するくらい、今の俺の毎日はすさみ、心身ともにすり減っていた。
ベッドの上を見ると、俺を見る由里子の顔に、困惑の色が浮かんでいた…
『ゴメン由里子―――俺、どうかしてた…』
そう言いながら、差し出した俺の右手を―――由里子は、無言でピシャっと払いのけた!!
拒絶………か?!
その時、かろうじて由里子の存在によって支えられていた俺の心が―――折れた!!
俺はしばらく言葉を失い、包帯に滲んだ赤い血を、茫然と見つめながらこう言った…
『―――そうかっ。それが―――お前の出した…答えなんだな………』
俺はそれだけ口にするのが精一杯だった…
由里子の顔を見ることもなく、俺はふらつく足取りで病室をあとにした。
俺がこの病室を訪れることは、この先2度となかった。
あの日教室で起きたこと
―9ヵ月の軌跡― E
「佐々の苦悩」―完―