佐々の苦悩-5
私は覚えていないけど…恐ろしい悪魔の姿に変貌したパパから、私を助けてくれたのは佐々先生だった―――と、ママから聞いた。
いつか先生にあげるはずだった私の“初めて”をパパに奪われ、その現場を先生に助けられた…
想像することしか出来なかったけど、それが本当だったら、余りにおぞましく、どうにかなってしまいそうだ…
先生は―――その時、何を思ったんだろう?
先生は、入院以来毎日来てくれるけど、私はどんな顔をして先生に会ったらいいのか?
―――未だに分からなかった。
♯♯♯
『由里子具合は…?』
「うんっ、ご飯も残さず全部食べるから、退院する頃には太っちゃうかも…」
由里子は、事件以来やつれきった俺を気遣い、そう言って笑いかけてくれる。
しかし、その笑顔が本物でないことくらい、俺にだって分かる…
『由里子…神木のこと忘れられないか?』
俺はずっと、心の中にくすぶっていた問いを、由里子に投げかけた。
「佑介とは、そんなんじゃないよ…佑介はただ友達として―――」
『―――佑介、佑介って…ずいぶん神木と親しげなんだな!』
「先生、何言って―――」
『―――由里子に隙があるから、アイツがそうやって付け込んでくんじゃないのか?』
「先生もうやめ―――」