佐々の苦悩-2
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俺は夏休み中も、サッカー部の練習に付き合ったり、なんやかやと仕事を作っては、毎日朝から学校に顔を出していた。
実際のところ、そうでもして気を紛らわせていないと、あの忌まわしい事件のことばかりが頭の中を占拠してしまうからだ。
1人でアパートにいると、昼夜を問わず、事件後の由里子の残像が脳裏に甦り、気が触れてしまいそうだった。
毎日、夕方5時でサッカー部の練習を終え、そのあと由里子の病室を訪れるのが日課になっていた。
そうして、無理にでも生活のリズムを作り、それを守ることで、俺はかろうじて肉体と精神のバランスを保っていた。
しかし、そのバランスを乱す憎らしいヤツが、毎日俺と入れ違いに、由里子の病室から帰っていく…
―――元サッカー部キャプテン―――神木佑介だ。
神木は、由里子や青山啓太、森ちなみ達と一緒に、ついこの前までサッカー部に所属していた。
日頃から、何かと仲の良かった同級生の4人組だ。
受験に備え、4人揃って夏休み前にサッカー部を引退していた。
神木だって、そろそろ受験勉強にも本腰を入れなければいけない時期のはず…
その神木が、毎日夕方になると、由里子の病室に入り浸っている…
しかも、看護士の話によると、俺の知らないところで何やらあやしい行動取ってるらしいじゃねぇか…
俺としては、それがたとえ看護士達のウワサ話のネタだとしても、面白くない事に変わりはない。
由里子の入院後、最初、神木は啓太やちなみ達と一緒に見舞いにきた。
そして、次の日からは毎日1人で病室を訪れるようになった。