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「瓦礫のジェネレーション」
【その他 官能小説】

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「瓦礫のジェネレーション」-9

第二章 「洗礼」



その日は美咲にとって1ヶ月半ぶりのデートだった。母の葬儀にともなうなんやかやは、父がこの地方の顔役ということもあり、想像以上の忙しさとなって高校生の美咲にも降り掛かったが、生来気丈なたちである美咲は、忙しい方が気がまぎれてよいとばかりにしばらくは家のことに没頭していたのである。実際のところ、母の病気は長かったので既に覚悟ができていたのか、悲しみはさほど尾を引くことはなかったのだが。
渋江浩一とは、つきあい始めてからそろそろ半年になる。何度か身体を求められていて、美咲のほうもそろそろと思っていたころに母のことがあったためにしばらく間があいてしまった後でのデートの誘いだった。
(いくらなんでも母さんが死んだばっかりなのに、……ってことはないわよね。でも、万が一ってことがあるから、一応ちゃんとしておこう)
前の晩、乙女らしい期待と不安を胸に、いつもより念入りに入浴し、とっておきの下着を準備する美咲だった。

美咲は待ち合わせの場所に少しばかり早く着いてしまい、手持ち無沙汰にそのへんを歩き回ったりしていた。日曜日の街は人出も多く、ひさしぶりのデートに胸を弾ませる美咲にはその姿を追っている二つの暗い視線に気付くはずもなかった。
「を、上モノじゃん、やりぃ」
「お嬢様かぁ。悪くねえな。処女かな?」
「デートの待ち合わせだろ、多分。だとしたらとっくにズコズコやりまくってるって」
「そっかー、残念」
「ま、俺としてはやれればいいけどね。今日は俺が先だからな」

浩一の車は湖に向かった。湖畔にはかわいらしいペンションが何件かあるが、途中の高速道路のインター側にはおしゃれなファッションホテルが林立している。どちらにせよ、浩一がそういうつもりであるのがわかり、美咲はその時点で覚悟を決めていた。
きょうびの大学生らしく車とファッションと音楽には金を惜しまない浩一であるが、恋人と始めて結ばれる場面で女の子がどういうシチュエーションを望んでいるかにまで気がまわるタイプではない。そのあたりに多少の不安を抱いたものの、結局美咲は
(浩一さんだったら、いい)
と思いながら、運転する浩一の横顔を見つめていた。

やがて車は湖に到着し、湖畔のレストランで遅いランチをとったあと、車を人気のない場所に停めて少しの間そのあたりを二人で散策した。ひとまわりしてもどると、浩一の車のそばに、見知らぬワンボックス車が停められている。
「あれ、さっきこんな車なかったよね?」
「参ったな。これじゃ車出すのたいへんだ、擦っちゃうよ」
困った表情で浩一がその車のまわりを見ていると、物陰から男がふたり、飛び出してきた。
「あの…この車あなたたちのですか?申し訳ないけど、ちょっと移動してもらえます?僕ら、車出したいんで」
「まあ、急がなくてもいいじゃん、どうせこれからホテル行ってズコズコやろうって魂胆なんだろ?」
片方の男が美咲の背後にまわりこんだ。警戒する美咲にもうひとりの男がポケットからナイフを取り出して、
「おっと、おとなしくした方が得だと思うよ。車ボコボコにされたら帰る足もなくなるわけだし、ケガしたくなかったらあんまり騒がない方がいいと思うけどね」
と言う。
美咲はとなりにいる浩一の顔を見た。ブルブルと震えている。美咲が浩一の陰に隠れようとしたその時、浩一は美咲をふり払って自分の車に逃げ込み、中からドアをロックし、ハンドルにしがみついて顔を伏せている。
「浩一さん……」
呆然としている美咲を、背後にいた男が羽交い締めにする。じたばたと足を振り上げて逃れようとする美咲だが男の力にかなうはずもなく、あっさりとさるぐつわをかまされてしまう。
「う、ううぅ……」


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