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「瓦礫のジェネレーション」
【その他 官能小説】

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「瓦礫のジェネレーション」-30

何の感情も含まれない口調でかおりがつぶやく。いつのまにか窓の外は暗くなりはじめていた。健志も起き上がって服を着ると、キッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを持ってきた。
「のど渇いたただろ?心配しなくてもちゃんと送っていくから、ちょっとそれでも飲んでて」
それから、思い出したように言った。
「かおり、携帯持ってる?ちょっと貸して」
かおりがバッグから携帯を出すと、受け取った健志は自分の携帯番号をメモリーに入れ、
「一応確認な」
といって自分の携帯にむけてワン切りしてから、かおりに携帯を返した。
「KNって入れたから。いつでもかけてこいよ」
(これでとりあえず、いつでも連絡はとれる。……でも、この先俺はどうしたいんだろう)
健志はモヤモヤを抱えたまま、車のキーを手に取った。

健志はかおりを家まで送り届けてから美咲のマンションへ向かった。時計は6時40分。少し早いかと思ったが陸は先に着いていた。美咲は買い出しから戻ったばかりらしく冷蔵庫にビールやらチーズやらをしまっている。
ソファがわりに使っているベッドの端に腰掛けた陸は、健志をとなりに座らせた。
「で、何すか?別件っていうのは、陸さん」
「うん、あのな、言いにくいんだけど……葉子が荒れてるんだよ。『健志が冷たい、つきあいが悪い』って愚痴ってるんだが、ちょっと荒れ方が気になる」
「葉子が、ですか?」
「ああ。健ちゃん、葉子のことどうするつもりなんだ?」
「どうするって言われても……別に俺等、つきあってるってわけでもないし」
「それに健志は、あの子が気に入っちゃったんでしょ?かおり……加納かおりだっけ?」
美咲が口を挟む。すかさず陸は美咲を睨み付けて
「男同士の大事な話に口挟むなって。全く女ってのはこういう話好きだからな」
と追い払う。美咲は仕方なくキッチンに戻ってサラミやチーズを切り始めた。
「なんか美咲さん、えらく素直じゃないですか?それに妙に女っぽくないですか?」
「ん、まあちょっとあったからな……って俺等のことはどうでもいいんだよ。今はお前のことを話してるんだぞ、健志」
陸が『健志』と呼ぶのは、よほど真剣な話のときだけだ。健志は一度立ち上がってからきちんと座り直す。
「実は……美咲さんの言うとおりかもしれない。なんか気になるんですよ、あの子。好きとかそういうんじゃないと思うんだけど」
「そうか、やっぱり」
「やっぱり、って何すか?」
陸は苦笑しながら、健志のほうを見た。
「健ちゃん、自分でも気がついてなかったんだな。まあ俺も美咲に言われて初めて『そう言われれば…』と思ったんだけど、お前、あの時後半は完全に一人占め状態だったぞ」
「それは……陸さんは美咲さんと隣いっちゃうし、史哉と康浩は男のほうにかかりきりだったから……」
「まったくこういう事だと女の観察力っていうのは恐ろしいや。ま、それはどうでもいいけど。でも、それだったらなおさら、葉子のことははっきりしておいた方がいい」
「はっきり、ですか……」
「その子のことも遊んで捨てるだけならどうでもいいが、そうでないんならはっきりさせてやらないと葉子もその子も傷つくことになるぞ」
「そうですね……考えておきます」
「まあ、バージン殺しの健もそろそろ年貢の納め時ってことかな?」
「何アナクロなこと言ってるんすか陸さん、年寄りじゃあるまいし。それにそのバージン殺しってのも止めて下さいよ。ものすごく人聞き悪いじゃないですか」
(まいったな……全部お見通しかよ、美咲さんは。……もしかしたら今かおりを抱いてきたばかりだってこともバレてるのか?)
陸から指摘されたことで、とりあえずモヤモヤは少しだけ薄らいだような気がした。
(……そうか。俺、かおりのことが好きなのか……だけど、どうしたいんだよ、俺は)


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