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「瓦礫のジェネレーション」
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「瓦礫のジェネレーション」-19

「私いつも朝は食べないのよ。ビールならいいんだけど」
「朝からビールですか? どうしてもというのならば構いませんけど、私は車ですからご一緒できませんよ」
「構わないわよ。酔いが醒めるまでのんびりしてればいいじゃない。時間はあるんでしょ?」
「困った人だ」
市丸は顔では苦笑しながらも、内心では小躍りせんばかりだった。これは千載一遇のチャンスかもしれない。しかも、向こうから誘っているようなものである。
「じゃあ、根来崎のホテルのスカイラウンジはどうですか? あそこなら景色もいいし落ち着けると思いますよ」

(なんだ……この程度の男なんだ)
拍子抜けするくらいに簡単に餌に食い付いてきた市丸に、美咲はちょっと呆れながら、単調な外の景色にも飽きてうとうととしはじめた。

---いや……だめ。やめて、お願い。
---ふふふ。本当にやめてもいいのかな? 体はそうは言ってないように見えるが。
---いやっ、見ないで。お願い……
---ほうら、こんなにヌルヌルさせやがって。「はやく入れて」って言ってるようなモノだぞ。
---あぁ……言わないで。恥ずかしい……
---正直に言わないと本当に止めちゃうぞ。どうだ。本当に止めてほしいのか?
---お願い……やめないで……

美咲ははっとして目を覚ました。昨夜のかおりの姿が生々しく夢に蘇るが、夢の中で陵辱を加えている男は市丸であり、責められているのは美咲自身だったのだ。不感症の自分が快感に負けて自ら求める……そんなことはあり得ない筈だった。しかし、夢の中の感触は妙にリアルであり、美咲は自分の下半身が熱く潤っているのを感じ、うろたえた。
(まさか、寝言なんか言ってないわよね、私……)
不安になって運転席の市丸の顔を見ると、市丸はそしらぬ顔で
「目が醒めたみたいですね。暖房強すぎましたか? お顔が少々赤いようですけど」
と笑っている。あわてて美咲は
「大丈夫よ。ちょっと薄着だったから風邪ひいたのかもしれないけど」
とごまかした。
美咲にとっては、あくまでも借りをチャラにするための罠なのである。酔っぱらったフリをして介抱させ、むこうがその気になったところで身をかわす。仮に無理矢理にコトに及ぼうとしても、父に訴えると言えばそれ以上手出しはできない筈だ。でも本当に手を出して来たら?その時はこちらも本当に父に話すだけのこと。

車はほどなくホテルの駐車場へと滑り込んだ。このホテルも美咲の父の持ち物である。市丸はフロントになにやら二言三言話し掛けると、美咲を促して最上階のレストランへ向かった。
全面オーシャンビューのスカイラウンジは、平日の午前中とあって、まだ人もまばらだ。ビール二つとポテトフライを注文した市丸は、なんとなく間がもたないのか、当たり障りのないことを質問しはじめた。
「それにしても美咲さん、学校のほうは大丈夫なんですか?」
「心配?テストやレポートは問題ないのよ。今日は次の課題の発表があるから行こうかと思ったんだけど、あとで誰かに聞くからいいし」
「卒業後はどうなさるつもりなんですか?」
「さあ?まだ決めてないし。ちょっと留学でもしようかと思ってるけど」
美咲の言葉に、市丸は内心でほっとした。輿石代議士の長男との縁談については、やはりまだ美咲には知らされていないのだ。


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