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「瓦礫のジェネレーション」
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「瓦礫のジェネレーション」-17

第三章「罠」



朝。陸の腕枕から抜け出した美咲は、シャワーを浴びるとブラウスをスカートを身に付けた。陸が気配を感じて目を覚ます。
「ん?どこ行くんだ?」
「学校。たまには顔出さないと進級できないし」
「ああ。ところで隣、どうする?」
「男のほうはほっといていいんじゃない? 彼女のほうは、なんか健が気に入ったみたいだから健に任せる」
「了解。あ、そうだ。車、修理出しておいた方がいいよな。俺あとで持っていっとくよ」
「ありがと」
軽いキスをして、美咲は部屋を出た。

隣の部屋は大分人数が減っていた。史哉、葉子、尚美の三人はいつの間にか帰宅したらしい。拓也は手足を縛られたまま片方のベッドに放置されていたが、疲れたのか眠りに落ちている。かおりは健志に命じられるまま、自らを指で慰めている。その姿を康浩がビデオで撮影している。
部屋を覗いた陸は、苦笑しながら声をかけた。
「ほどほどにしておけよ。あ、男の方は俺が返しておくから」


不幸な初体験でセックスに対する嫌悪感を抱いてしまった美咲に対して、陸は可能な限りそれを取り除こうと努力した。しかし美咲は、陸を受入れはできるものの、ほとんど快感というものを得てはいないようだった。唯一、昨晩のように見ず知らずの男女に陵辱を加えたときにだけ、美咲は自ら積極的に陸を求めた。
犯されていながらも快楽に我を忘れているかおりの姿を、美咲がどんな思いで見ていたのか……それを思うと陸はやりきれない気持ちがしていた。
拓也をたたき起こして服を着させ、美咲の車に乗せて夕べの河川敷まで連れていき、そこで解放した。
「わかってると思うが、このことを誰かに話したらかおりがどうなるかよく考えろよ」
拓也は黙ってうなずき、放置されていた自分の車に乗り込むと逃げるようにそこから走り去った。


普段こんなに早い時間に電車に乗ることのない美咲にとって、身動きできないほどのラッシュは慣れていないこともあって不愉快なものだったが、それでも寝不足のためか、立ったままうとうとしはじめていた。
やがて電車がホ−ムに滑り込んだ。美咲の目的の駅はまだ先だったが、降りる人の波に押されてホームまで押し出された。
降りる人をやり過ごしてから再び電車に乗り込もうとしたその時、自分がバッグを持っていないことに気が付いた。どうやらラッシュの中で人に押されてしまったらしい。美咲は一瞬、軽いパニックに陥ってしまった。
とその時、改札へ向かう人の列の中に、自分のバッグを見つけたような気がした。美咲はあわてて追い掛けるが、自動改札のバーに跳ね返されてしまう。立ち往生する美咲に、周りにいた何人かが非難の視線を向ける。そのうちに駅員が駆け寄って来た。
「ちょっとアンタ、切符はどうしたの?」
「バッグ、持っていかれちゃったのよ。早く行かないと逃げられちゃう」
「はあ? 話はあっちで聞くから、とにかくちょっとこっちに来い」
駅員は美咲の体を嘗め回すように上から下まで観察すると、腕を掴んで事務室へ連れて行こうとする。むっとした美咲がその腕を振り払おうとすると、駅員は大声で怒鳴り出した。たちまち、さらに2人の駅員が駆け付ける。
「どうした?」
「こいつが無賃乗車の上に逃げようとしたんだよ」
「違う!私はバッグ取られたからおいかけようと……」
「まあまあ、とにかくあっちの部屋に来てもらおうか」
両側から腕を掴まれてはさすがに美咲も抵抗できず、おとなしく従うしかなかった。仕方ない、事務室から電話をかけさせてもらえば身元は証明できるだろう……そう思ったとき、背後から高価そうなスーツに身を包んだ30前後の長身の男が声をかけてきた。
「美咲お嬢さんじゃないですか。どうしたんですか、こんなところで」
「こちらのお知り合いですか?ちょっと改札でトラブルがありまして、お話を伺いたいと思っているんですが」
「その人は私の会社の社長のお嬢さんなんですよ。あ、申し遅れましたが、私こういう者です」


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