絶望からの生還-3
後悔はこの先一生続くだろうが、今までよい母親でなかった分、これからは由里子に寄り添い生きていく…と涙ながらに語った。
響子は、俺の予想をはるかに超えるまともな人間だった。
そのことが、傷ついた由里子にとって、今の時点での唯一の救いかも知れない。
『先生に一つだけ聞きたいことがあるのよ…』
響子は由里子とそっくりな漆黒の潤んだ大きな瞳で、俺の目を覗き込んだ。
俺は目の前にいる響子の、由里子とそっくりなしぐさに自然と笑みがこぼれ、『俺に答えられることなら何でも…』と言っていた。
『由里子は佐々先生に恋をしてるみたいなの。 あの子のうわごとは、母親の私が嫉妬するくらい、あなたの名前ばかりなのよ… 佐々先生は由里子恋人なの?』
やはりそうきたか―――
俺も、昨日家に帰って1人になったあと、これからの由里子とのことをずっと考えていた。
あれだけ悲惨な状況の現場に俺は足を踏み入れ、ボロボロになった由里子をこの腕に抱いた。
この先、由里子の心と体の傷が癒え、回復した時…俺の方は立ち直っているのだろうかと?
義父によって俺の目の前で犯された由里子を、この先愛し、そしていつか抱くことが出来るのか?
何度思いを巡らせても、行き着くところはそこだった。
ただ一つだけはっきり言えることは…
同情だけで由里子と向き合うことはやめよう…というのが、今の時点で俺が出した結論だった。