メルファ・人形残酷(?)物語2-1
それから更に、半年過ぎた。
状況は相変わらず変わってはいない。
ジャックは人形部屋を中心に、隠しカメラを設置して人形たちの様子を撮る事にした。
人形協会に提出する為である。
人形協会…
国中の全ての生きた人形たちが生きる権利を持ち、安心して暮らせるよう地位向上を目指して設立された機関である。
「何じゃいこれは?」
ジャックから提出された、ビデオ映像を観た協会のボックル・ゲイツ会長の表情が固い。
ビデオの内容は…
メルファやその子供たちの生活の様子を捉えた映像である。
ママと楽しく過ごす、微笑ましい光景だが…
生活の乱れぶりに正直、世間様にとうてい見せられる印象ではない。
「どうです会長?」
ジャックがさえない顔して質問する。
「躾が、なっとらん。
食事のマナーは悪いし、トイレの躾も出来とらん。部屋ん中にトイレも作っとるんじゃろう?」
「最新モデルのヤツを入れたつもりですけど」
「じゃあ何故、外でさせる? コイツら犬か?」
「メルファお母さんに聞いて下さい」
「ジャックの所は、どうなっとるんじゃあ?
1年も経てば、このくらいぐらいはピシッとならなければイケないハズじゃぞ?」
「どのくらい、です?」
「この映像を観てみい」
会長は1枚のディスクを手元の映像機器にセットした。
空中に浮かぶ光のスクリーンに映像が映し出される。
「何の映像ですか?」
「セレブ・ザーマス家の所の人形たちを撮った映像じゃよ」
「ああ、あの強欲で有名なマダムセレブですね」
「強欲でも、生活態度はキチンとしとるぞ」
ジッと映像を見つめるジャック。
メルファと子どもたちたちが楽しく生活しているのと同じ光景だ。
だが明らかに、何かが違う。
子どもたちへの教育の徹底ぶりがハッキリと受け取れるのだ。
それでいて、母親人形の子どもたちへの愛情は強いようだ。
子供人形たちは母親や周りの人間たちと上手くコミュニケーションを取っている。
皆、表情が明るくイキイキとしている。