天使のすむ場所〜最後のドライブまで、あと〜-2
俺は、嫌な夢を見た日は必ずといっていい程、美香を抱く。ほしくなる。美香の中に居たくなる。たぶん、それは俺にとって「生きてる証」を感じさせてくれるからなんだって最近思う。美香を抱くことで、美香が傍にいること、自分が生きていることを確認している気がする。そうやって、「今日も生きてる。」って安心したいんじゃないか?そうやって、美香の中に存在していたくて、仕方ないんだ。
美香を無理やり、ベッドに引きずり込み俺の上に乗せる。
「・・・ねぇ。本当にダメだってば。」
ほんのりピンクに染まった美香の頬、上気して濡れた真っ赤な唇、困ったように笑う潤んだ瞳に俺が映る。俺は両手で美香の顔を包み、つぶやく。
「我慢できないくせに。」
少し意地悪だったかな。美香は頬を少し膨らませ、俯いた。可愛い・・・なんで、こいつはこんな可愛いんだよ。ばかだなぁ、ほんと俺。一人で苦笑する俺の上を、美香が降りようとする。そんなことさせないけどね。
「ほえっ・・・。」
体勢逆転。美香は仰向けで、ベッドに沈んだ。目を見開いて、俺を見つめている美香。でも、俺はもうとまらないんで。ごめんね。(笑)
「なーおーとー。もうっ、看護師さん来ても知らないからねっ!」
「さっき来たばっかりだから、あと30分はきません〜。てゆうか・・・。」
俺は、美香の左うなじにキスを落とし、
「もう、黙って。」
低く、甘く、囁く。震えた美香の身体を抱きしめ、そのまま耳に向かって舌を這わせる。美香は観念したように、俺の首に両腕を回した。それが了解の合図。
なぁ、美香。俺まだ生きていたいよ。美香とこうして抱き合えるのは、あとどれくらいだろう。あとどれくらいの時間が残ってるのだろう・・・。
そんなことが頭を過ぎったけれど、俺はそれを振り払うかのように美香の漏らす吐息を塞ごうと、真っ赤に熟れた唇を食べに向かった――――。